先日、ムスメが生まれてからずっと思い描いていた夢が叶いました。

 叶ってみればあまりにもあっさりで、その時はむしろ困惑さえしましたが、今じわじわと感動を味わっています。

 その夢は、ムスメと仲良くゲームをすること。

 笑われるかもしれませんが、幼い頃からゲームと共に育った私にとっては、本当に大切な夢でした。

 月2回のお泊り面会交流の中で、どうやってゲームを好きになってもらおうかと考えていました。ハム太郎が好きだった時にはハム太郎のゲームを見せてみましたが、期待したような反応は得られませんでした。

プリキュアのダンスゲームをwiiでやってみますが、横で踊るけれど、コントローラーを持って踊ろうとはしませんでした。

どうやら自分がやって失敗するのを避けたい様子で、『レッツゴーイーブイ』でも、ボールを投げるのは私。ムスメは私の後ろに隠れていて、ゲット成功の時は出てきて喜びます。それはそれで可愛かったのですが、もう少し積極性が欲しいと思っていました。

でも、無理強いはしないことにしました。ゲームを嫌いになってしまっては元も子もありません。自然と興味を持つ時を待ちました。

色々試してはみましたが、家でゲームを見せたのは三か月に一度くらいです。

 

そんな娘が変わるきっかけは、5歳になって、そろそろゲームでも、と元妻の家でSwitchを買ったこと。ソフトは『ポケモンスナップ』でした。

ある日、いつものお泊りの時にその話を聞いて、とても驚きました。「〇〇の写真撮ったんだよ!」と嬉しそうに話すのです。自分でコントローラーを握って、プレイしている。それは素晴らしい成長でした。

やはり、いつも家にある、というのは違うものなのでしょう。私の家には常にSwitchが見える状態で置いてありますが、月に2回しか見る機会がなく、私もムスメが望まなければゲームを起動しなかった(ほぼYoutube再生機でした)ので、現実味がなかったのかもしれません。

次の面会の時には、そのソフトを持ってきてくれて、一緒にプレイしました。ムスメは先を知っていて、私に色々教えてくれます。それも嬉しいようでした。

実はその時既に夢は叶っていたのですが、私にはその自覚がありませんでした。おそらく『ポケモンスナップ』が私には馴染のないゲームジャンルだったからでしょう。

 私はゴリゴリのドラクエ世代で、ほぼRPGしかやってこなかったので。

なるほど、視点を操作して、Aボタンで写真を撮る、それだけ。

単純な操作だからこそ、5歳児がプレイする初めてのゲームとして、ベストな選択だと思いました。私にはその視点が足りなかったのです。

 今では『ポケモンスナップ』を二人でプレイしたあの時間は、かけがえのない素晴らしい時間だったとわかります。
 

 それから少しして、ムスメが『ポケモンスナップ』を持ってこなかった時のことです。ゲームは持って来なかったけれど、頭の中はポケモンでいっぱいで、おしゃべりは大体がポケモンの話でした。

 そして、ムスメはふと思い出しました。少し前、まだムスメが『ポケモンスナップ』にハマる前のことです。一度、ムスメに『ポケモンバイオレット』を見せたことがありました。主人公にムスメの名前をつけてパートナーにニャオハを選び、30分ほど進めたのです。その時はそれだけでした。

「それ(まだ「データ」とは言いません)はもう消えちゃった?」とムスメは問いました。もちろん残してあったので、続きをプレイしました。

 まずは私が少しフィールドを歩いて、野性のポケモンと戦います。ムスメは隣でじっと見ていました。以前は、戦う時も隠れていたのに。

 初めて出会ったポケモンを二匹ほど捕まえたあと、私がそっと「やってみ」とムスメにコントローラーを渡すと、ムスメは、ムスメの名前の主人公は、駆け出しました。

 左スティックを倒すと歩ける、などとは教えていません。私の操作を見ていたことと『スナップ』で培った勘で、動かしているのです。

 決定やボールを投げるという操作も、一度教えればすぐに飲み込み、どんどんポケモンを捕まえていきます。

 予期せぬ動き(しゃがんだままになってしまった時など)をして困惑している時だけ手助けして、ムスメはどんどん操作に慣れていきました。

 とは言えお話は完全に読まずにスキップするので、目的地もわからずウロウロしてしまうため、目的地までのナビゲーションをします。私は一度クリアしているので、どこに行けば良いかはわかっていました。

 ムスメは少しすると私にコントローラーを渡し、見る側に回ります。私はムスメが苦手なトレーナー戦や、ストーリーの進行、ボールの補充などをします。また少しすると、ムスメは私からコントローラーを受け取り、野性のポケモンを捕まえる。

 そのやり取りの中で、私ははっと気づいたのです。

 あれ、今これ夢叶ってないか? と。

 

「夢は叶うものではなく、叶えるもの」という名言があり、私もそう思っていました。夢を叶えることができるのは、自分の努力だけなのだと思っていました。

 でも、そうではなかったのだと、初めて知りました。

 今回の夢が叶ったのは、私だけの力ではありません。

 月に2回の面会、しかもお泊り面会を許して、続けてくれた元妻のおかげでもあり、

始めてのゲームに『ポケモンスナップ』を選択してくれたおかげでもあり、

ムスメが泊まりに来るときはいつも協力してくれている私の両親のおかげでもあり、

機会は少ないけど、楽しそうにゲームをする様子を見せてくれていた姪や甥のおかげでもあり、

毎回全力でムスメに向き合い、大好きなパパでいられた私のおかげでもあり(笑)ます。

 私は夢を叶えていません。

 私の夢は、叶ったのです。

 

 努力すれば夢が叶うと信じ、その努力もままならずに、いっこうに距離が縮まらない夢が、私にはいくつもあります。

 私だけではなく、誰にでもあるはずです。

野球少年の多くはプロ野球選手になれません。

何年続けても売れずに諦めていく大勢のお笑い芸人がいます。

努力は報われないことが多いとみな知っているのに、努力する以外の方法を知らない。

努力は報われないことが多いとみな知っているから、中途半端な努力しかできない。

 そのうち、夢は叶わないものだと、諦めて、絶望してしまう。

 

 それでも、叶う夢はありました。

 私のムスメへの向き合い方を、努力ととらえることはできますが、自分としては努力と言うよりも、ただ会うのが楽しくて、嬉しくて、ムスメのことが愛おしいだけでした。

 

 これは一体何なのだろう。正直困惑しました。

 夢、叶っちゃったよ。いいのか、これ? なんて。

 でも、ポケモンのことを調べていたら、その答えが見つかりました。

 アニメの初代主題歌「めざせポケモンマスター」の一節に、このような歌詞があります。

 

ユメはいつかホントになるって

だれかが歌っていたけど

つぼみがいつか花ひらくように

ユメはかなうもの

 

 やっぱりポケモンは偉大でした(笑)。

 

 もしかしたら今後も、私が持っているつぼみのどれかが花ひらくことがあるかもしれません。

 そう信じられる、日々できることをやっていこうと思えるだけで、とても幸せな気持ちになります。

 ありがとうムスメ。ありがとうポケモン。