5ヵ月ぶりに「よいこのデンジャラスセレクション」やります。
 このシリーズ、せっかく楽しみにしてくださる方ができたというのに(約2名ほどだけど)、期待されると裏切りたくなる性質なのが災いしてか、どうも後まわしにしてしまっております。
 いや、ホントはもっとハイペースでやるつもりなんですよ。いけませんね、ここの管理人は気が多くて。
あせる

 

 今回は、1953年の作品なのに、なぜか今年になって流行ったらしい映画のタイトルに因み、人の名前にまつわる曲の特集です。

 

 

金子由香利『愛のバラード』<作詞:山口洋子/作曲:大野雄二>

 

 あまりにも有名な、映画『犬神家の一族』の主題曲『愛のバラード』。大野雄二作品である本曲は、いかにも横溝ワールド的世界観を醸し出す怪しげな雰囲気から一転、重厚な人間ドラマを思わす構成。その美しくも悲しい旋律で、映像として繰り広げられる展開を見事に音で表現してしまった大傑作であった。
 Aパートのおどろおどろしい空気を作り出すことに貢献している大正琴のような音色はダルシマーという弦楽器で、名作『第三の男』の『ハリー・ライムのテーマ』でも有名な、チターの仲間として分類されるのだという。
 一般的にはインストゥルメンタルとして知られる本曲。しかし同曲にはシャンソン歌手の金子由香利が歌った歌詞つきのものも存在しており、しかもシングルカットされている。一発で熟女の声だとわかるのがイイ。
 たぶんコレ、劇中では使用されてないですよね? そんな記憶ないから。わかる人、おしえてください。
 なお、歌詞のなかに誰かの名前を呼ぼうとするくだりはあるものの、明確にはされていない。しかしこの詞が高峰三枝子演ずる犬神松子の心情を歌ったものならば、それはあの男ということになるか・・・。

 

 

 

沢久美『ミミの甘い生活』<作詞:滝田順/作曲:信楽順三>

 

 これを歌っている沢久美という歌手は、ちょっと前に「平浩二『ぬくもり』の歌詞がMr.Children『抱きしめたい』の歌詞にそっくり!」という疑惑で話題になった、当の作詞者だった人らしい。
 ・・・うん、たしかに比較してみますと似てるようには見えますね。でも、でも、きっと、きっと、気のせいなんじゃないかな? たまたま似ちゃったってだけで、そんなのよくあることですよ。うははははは(島崎和歌子笑い)!
あせる
 で、本曲なんですが。
 ネット上の声を拾ってみてますと「男のあえぎがヒドすぎる」「ゲテモノの極み」・・・と、上々の評判なんですな。胡散くさい昭和歌謡がお好きな向きには外すわけにはいかない迷曲なんでありまする。「ミミ」という名前が出てきますが、おそらく歌詞のなかの世界での語り手自身のことのようです。
 系統的には以前ここでも記事にしました應蘭芳の『痛い痛い痛いのよ』と同じ属性ではないかと。ただ『痛い痛い~』は使用用途がハッキリしておったのですが、こちらのほうは少なくとも私的には使えそうなシチュエーションがありません。
 しかも1番でも2番でも「大きな坊や」などと呼ばれちゃうのです。どなたか、この歌の有効な活用法をおしえて・・・というか実践して是非とも報告してくだされ。

 

 

 

パチソン『とべ!グレンダイザ―』<作詞:上原正三/作曲:菊池俊輔>

 

 ご存知、マジンガーシリーズの第3作目にあたる『UFOロボ グレンダイザー』の主題歌。歌のなかに登場する名前は物語の主人公=デューク・フリードである。
 この『グレンダイザー』は日本でもかなりの知名度を誇っているが、海外での人気はさらに凄まじい。とくにフランスにおいては半端なき支持率を誇り、その視聴率は平均で75%、最高で100%をスコア。「街から人がいなくなった」との伝説を築くほどであったと聞く。

 ただし現地では前作が後から放送されたらしく、そのためストーリー上の辻褄が合わなくなって混乱を招いたとの情報も・・・。
 それはそうとして、ここで扱うのはパチソンなんである。本編にみられる大空中戦をはじめとするスケールのでかさとは打って変わり、イントロが流れた時点で緊張感を根こそぎ奪い去られてしまうという怖ろしい迷曲に仕上がってしまっている。
 力強さとは無縁そうなヴォーカルが、それに拍車をかける。最大の聞きどころは、メロディが勝手に変えられてるところであろうか。
ショック!
 そしてパチソン歌手特有の問題なのですが、この曲の場合もご多分に漏れず。歌ってるアナタ様こそが最大の「君の名は・・・どちらさんどす?」な状態なんでありんすねぇ。

 

 


新沼謙治『左官職人 こね太郎』<作詞:新沼謙治/作曲:新沼謙治>

 

 2004年に発売されたシングル『飛行機雲』(作詞:木下龍太郎/作曲:宇崎竜童)のカップリング曲。当初はB面(?)扱いだったので気楽にやろうぜという背景があったのかは定かでないが、歌い手である“ニーヌ・マッケンジー”こと新沼謙治自らが作詞と作曲を担当している。
 それが発売後しばらく経ってからこちらのほうがプッシュされるようになり、両A面扱いとされることに。現在ではマッケンジーの代表曲のひとつとしてカウントされることもある(ただし売れたのかどうかは知らない)。
 冒頭で「腰に手ぬぐい ぶらさげて♪」と歌い始めるのは『我が良き友よ』以来のものだと推測するが、この曲は岩手県大船渡市出身のマッケンジーが中学を卒業後、集団就職により栃木県宇都宮市にある左官業の会社で働いていた実体験をもとに作られたものだと思われる。ゆえに「練って 練って また練って こねて こねて またこねりゃ♪」というフレーズは左官を生業とする職人さんたちにとっては実用性の高い歌であると同時に、ねるねるねるねを食べる際にも応用の利く一曲でもあるので試してみてほしい。
 私事な思い出で恐縮だが、6年2組の松本くんが卒業文集の将来の夢の欄に「さかんや」と書いていた。松本くんには是非、第二のマッケンジーを目指してもらいたいと願う。
 ところでマッケンジーといえば映画『二百三高地』で数少ない生き残りの兵隊を好演したことと同様に大変な鳩好きとして知られているが、ある日お子さんが「猫を飼いたい」と言ったため、飼っていた30羽ほどの鳩を泣く泣く手放すことになったんだそうだ。明日みんなにおしえてやろうぜ。

 

 


忌野清志郎+坂本龍一『明・る・い・よ』<作詞:忌野清志郎+坂本龍一/作曲:忌野清志郎+坂本龍一>

 

 資生堂1982年春のキャンペーンテーマ曲でありながら、歌詞のなかに「他人の目を気にして生きるなんて くだらない事さ♪」といった本末転倒なフレーズが含まれてたのが不思議だった『い・け・な・いルージュマジック』のB面曲。出てくる名前は「アッコちゃん」「ユウコちゃん」「金子」「吉田」。何が言いたいのかよくわからないが、とにかく片っぱしから人を呼んでは踊り狂い、最終的にはかつて日本引渡協会で放送されていた某長寿番組のタイトルが飛び出しフェードアウトされるという難解な内容。悪ふざけなのか何なのか。
 音的にも変則的というか・・・私はこれを初めて聴いたとき、レコードが針飛びしてるのかと思った。忌野清志郎+坂本龍一という、ひと癖どころじゃないコンビが作った曲なので意味深なように思えなくもないし、じつはそうでもないのかもしれない。が、それでも「カッコいい」と感じる人がいるのも事実で、そう思わせるだけのすべを持っている彼らはやはり非凡なのだろう。
 ここでひとつ疑問。こういった曲のように作詞者や作曲者が複数人で表記されてることがよくありますけど、ああいうものの共同作業ってどんなふうにやってるんですかね? テーブルに椅子を並べて意見を言い合ってるのでしょうか? いっぺん作業してるところが見てみたいです。
 あと、歌詞に出てくる「吉田」という人物が誰のことを指してるのかは知らないけれど、私はサザンオールスターズの『吉田拓郎の唄』が大好きでしてね。あれって仮タイトルの段階では、なんと『死ね吉田拓郎』だったと知り、もっと好きになりました。 ※『吉田拓郎の唄』は吉田拓郎へ向けた、いい意味での応援歌です。

 

 

 

 ――そんな5曲でした。いいのはありましたか?
 名前をテーマにした特集は、そのうちまたやるつもりです。

 

 最後に。

 

 

 私の名前は、両親が一生懸命考えてつけてくれました。