4月13日は、ふたつの催しに足を運ぶことになりました。なので体調を万全にしておかなければならなかったのに、一睡もできぬまま出動することになってしまいまして。
 べつに病気になったわけではないのですが、気持ち的にちょっと不安にはなりましたかね。

 ふたつのうちのひとつは、中野サンプラザでおこなわれる「荒木しげるメモリアルデー」。翌14日が荒木しげるさんの三回忌にあたるとのことで、日曜日である前日のこの日、偲ぶ会を開催することになったのだとか。
 今回はライダー2号=佐々木剛さん、X=速水亮さん、スーパー1=高杉俊介さん、特命捜査課の同僚=誠直也さん、フォー・セインツのギター=ダニー石尾さん、娘さん=三枝りなさん・・・といった、生前の荒木さんとゆかりのある方々をゲストにお招きとのこと。おそらく荒木さんの思い出話をたっぷり聞けるものだと思い参加した次第であります。

 現場に着きましたら、またしてもゆうんこりん氏が受付を担当していました。この方、この手のイベント(この日のも「イベント」と
言っていいのかな?)にはだいたいスタッフとして参加されてます(笑)。もっとも、彼女とて荒木さんとはゆかりのある人なわけでして、生前の荒木さんが同所でイベントされてたときから受付してましたけどね。
 荒木さんを知る人物でもあるわけだから、裏方だけじゃなくてゲストとして出演してもいいんじゃないかとも思うんですけど(笑)。

 適当な席に座って待っておりますと、ヱビス星人さんがお越しになり私の隣へ。こないだはスタッフとして参加されてたヱビス星人さんですが、今回は一般のお客としての参加だそうで。
 他にも見たような顔(常連客?)がチラホラしていましたが、伴さん会のレギュラーでもあるヱビス星人さんが隣にいるというのはリラックス効果があります。

 開始時間が遅れてる様子。このあとスムーズに進行していかない事態が何度もおとずれることになるのですが、いまにして思えばこれがその前兆だったのかもしれません。
 まず、参加予定だった誠さんとダニーさんが欠席されるとの報。よって、この日のイベントが仮面ライダー一色になってしまうことが決定的になってしまいました。
 これはイタい! もちろん仮面ライダーもいいのですが、正直に申しますと今回に関しては特捜最前線やフォー・セインツへの関心のほうが高かったからです。誠さんはご家庭の事情によるものだそうですが、ダニーさんは癌により闘病生活に入るとのこと。
 なんてことだー、あの若々しかったダニーさんまでもがご病気とは・・・!
 荒木さんもそうでしたが、この年代の方が次々と倒れ、この数日前にも石田信之さんが闘病に入られたと報じられたばかり。ヱビス星人さんも心配そうな顔をしてます。
 しかし、私たちには無事であることを祈ることくらいしかできません。

 じつはダニーさんはかつて、こちらへアメンバー申請してこられたようなのです。でも、そのプロフィールには何も書かれてません。私はアメンバー承認は慎重にやってるので当初は受付けないつもりでした。
 ですので、せめてプロフィールを埋めてほしいとお願いのメッセージを出そうと思ったわけです。ですが、メッセージ文が出来上がった瞬間、そのハンドルネームに気づいたのです。
「danny_croce? danny・・・ん、ダニー? まさか!」
 あわてて承認しましたよ。それは以前、ここで荒木さんの追悼記事をupしたときのこと。他人に見せるために作った記事とは一線を画したかったのでアメンバー限定にしたものでした。どうやらダニーさんは、その記事を見るためだけに、わざわざアメーバに登録されたのではないかと思います。事実、そのアカウントでの記事はその後ひとつも書かれませんでしたし、ダニーさんはダニーさんでご自身のブログ(アメブロではない)をお持ちでしたし。
 あの記事を読んだダニーさんが、どのような感想を持たれたのかはわかりません。もしダニーさんとお会いできるようであれば、そのことも伺いたかったものですが・・・。

 気を取り直して続きをば。
 オープニング。速水さんが荒木さんへ宛てた手紙を朗読します。おそらく速水さん自ら書き上げたものだと思います。荒木さんのことを「ストロンガー」と呼ぶあたりが、いかにも速水さんらしく、また胸を打つ語りでありました。
 そして生前の荒木さんが活躍された名場面集。ミュージシャン時代から役者へ転向してからのさまざまなシーンがスライド上映されます。BGMはもちろん『小さな日記』に始まり『仮面ライダーストロンガーのうた』『斗え!! 超神ビビューン』・・・と続くわけですが、このへんは生前の荒木さんがイベントをやるたびに見られた演出でもありました。が! 音響の調子が悪いらしい。ブツ切れになってCDを最初からかけ直したり、無音の状態がしばらく続いたり・・・。
 どうも締まらない。締まらないのですが・・・でも、これでいいのです。
 そうです、イタズラ心の芽生えたストロンガーが見えないところで電ショックしているからです(笑)。しかも電気機器には無差別攻撃しているらしく、このあとにもしばしば起こります。司会の方も「(荒木さんが)来てるな」とニヤリ。通常なら歓迎されない事象ではあるのですが、この日に限ってはいい方向へ解釈できるという、なんともあたたかい雰囲気でありました。


●フォー・セインツ『小さな日記』(1968)/『希望』(1969)


 スライド上映が終わるとトークショーのスタートです。ゲストはまず佐々木さんが登場し、速水さん⇒高杉さんの順で壇上が埋まっていきます。それぞれが少しお話をされてから、ちょっとずつ集まってくるというかんじです。

 続いて、急遽出演することになったという、荒木さんの元奥さま=結城三枝さんが現れ、そして娘さんの三枝りなさんがご登場。
 りなさんのときは『仮面ライダーストロンガーのうた』を歌いながらの入場だったわけですが・・・・・・その・・・・・・正直、ぶっつけ本番であることがとってもわかる歌声でして。ご本人も「父から『おまえは人前で歌うな』と言われてました」と告白されてましたが、それはそれは斉藤清六な個性的な歌唱法だったのでございます(笑)。
 しかし当ブログでは何度も書いてきましたように、歌唱力というものは絶対なものではないと考える私としては、それはそれで楽しみたいわけであります。
 ただ、場内を「これを、どうすればいいのだ?」という、なんともいえぬ空気が支配しておったのも事実でして(汗)。ヱビス星人氏も「う~む、この演出はいかがなものか」と戸惑いの表情を隠せない(笑)。私は私で、そのヱビス星人氏の顔が面白くて堪らないでいる。
 ・・・と、ゆうんこりん氏が後ろのほうから小声で話しかけてきました。
「一緒に歌ってください」
 なるほど、そういうことか。やがて参加者全員による大合唱へと変わっていき、めでたくこの場は良好なすべり出しと相成ったのであります。りなさんも、ひとまずホッとしたような表情になりました。よかったよかった。

 トークの内容はですね、やはり仮面ライダーが中心になりましたね。なかでも速水さんのお話が面白かった。
「仮面ライダー(の主役)はね、Xを境に分かれるんだ」
 速水さんは、ライダーのメンバーには人間性の違いに境界線があることを力説。荒木さんや(アマゾンの)岡崎徹さんとは初対面でも格好つけることなく話せる、いわゆる常識人として付き合うことができたのだそうです。ところが、先輩ライダー3人については思いきり変人扱いです(笑)。なんとかしようと試みたことはあるそうですが、結局は「ダメだこりゃ」になっちゃうんだとか。
 しかも速水さん、目の前に本人(2号)がいるのにボロクソに言ってのけてます。しかし2号はそれを聞きながら、否定するわけでもなくニコニコと笑っているだけなのです。どうやらご本人にも思い当たるフシがあるのか、返す言葉が出ないというのが正解っぽく見えます。
 なんでも、九州のほうで荒木さんにまつわるお芝居をやったことがあるそうなのですが。そのときの佐々木さんのコンディションが最悪で、本番直前になっても関係者一同「これ大丈夫か?」と絶望的な空気になったんだとか。
 ところが本番での佐々木さんはビシッと(なのかどうかは存じませんが)決めてくれたらしく、奇跡的にカタチにすることができたというエピソード。このへんのくだりは速水さんのブログにも綴られていますので、興味のある方で未だ読んでない方は見に行ってください。
「彼が押してくれた」
 そのように、荒木さんの助けがあったことを強調する佐々木さんなのであった。
 見たところ、やはり速水さんはトークが得意なんだと思う。この日のトークは率先して引っぱっていってるかんじです。高杉さんは控え目にされてますが、要所で話題に入ってくるかんじで、それはそれで上手いのかもしれません。高杉さんとは何度もお会いしましたが、常に“沖一也”であることを崩そうとしないところが素晴らしいですね。
 そんななか、佐々木さんだけは置き物のように座っておられる。基本、あまりしゃべろうとはしない。モチロンしゃべるときはしゃべるし、ファンからの質問にも快く答えくださいます。でも肝心なところは「バッタもんへ来なさい(ニヤリ)」で“to be continued”を促し場内を笑わすスタイル。ちょっとズルい(笑)。
 そんな佐々木さんを速水さんは、一応「先輩」とは呼んでるんだけれども実際のところはツッコミまくり、という図式。ところが、それが効いてるんだか効いてないんだか、ほぼ表情を変えることなく「暖簾に腕押し」状態な佐々木さんは貫禄たっぷりなのでありました。

 話題は、結城さんによる、荒木さんとの馴れ初めや荒木さんの私生活のお話に移ります。そして、りなさんは「お父さん」としてのエピソードをご披露。結城さんにとっては寂しがりやな旦那さんで、りなさんにとって荒木さんは素敵なパパだったようです。結城さんは、いかにもモデル出身のようなお顔立ちをされてます。そして、りなさんはお母さまにソックリです。

 ――と、ここで速水さんから本会の本当の狙いが打ち明けられました。それは「“ストロンガーの忘れ形見”りなさんを世に知らしめたい!」とのことで・・・なんとメモリアルデーの主役が、りなさんになるという予想外の展開に(笑)!
 会場には、りなさんが出演(佐々木さんも共演)しているという埼玉県発ご当地ヒーロー『武蔵忍法伝 忍者烈風』のプロデューサーさんと主人公=烈風(本物)が応援に駆けつけてこられた。 なんでも、りなさんの芸能界入りを当初は否定的だった荒木さんでしたが、離れて暮らすようになってから、りなさんが同じ世界に入っていることを知り、テレビの関係者に「娘を頼む」と言っていたそうですが・・・。
 そのテレビの関係者というのが後の『忍者烈風』のプロデューサーさんで、荒木さんが託した願いは、お亡くなりになってから実現することになったのだとか。この日は『忍者烈風』での名場面も上映されました。
 事の経緯は、りなさんやプロデューサーさんから語られたのですが、全身フルコスチュームの烈風までもがマイクを持つという場面も。この思わぬ事態に「(着ぐるみなのに)しゃべるんかい!」というツッコミもありましたが、そこはご当地ヒーローゆえのユルさなのでしょうか。だけど立派なガタイとは裏腹に、あどけなさの残る話し方がユルさに拍車をかけ、場内はホッコリとした空気に包まれるのでした(笑)。

 それにしても、この日はストロンガーのイタズラが度を超してました。いよいよ電気機器の不具合が多発しすぎ。なかでもショーの最中にPCがまともに作動しなくなるというハプニングがあり、それによって流したい映像が流れない、しかもなかなか復旧しないという、スタッフからすると冷や汗モノの様相になってたのがなんともお気の毒。いっぽうで、それを面白がる私みたいな客が同じ部屋に居る、という妙ちきりんな空間でして。
 ここで機転を利かしたのが、やはり速水さんなのでありました。軽妙なトークで凌ぎ、それでも回復しないと見るや佐々木さんに自作の歌をアカペラで歌わせたり、「仮面ライダーで、いちばん歌が上手い!」と紹介して高杉さんの定番曲でもある『九人ライダー永遠に』を歌わせたり・・・で場をつなぐ。これを見てたら「ライダーのリーダーはXでいいんじゃないか」と思いました(笑)。
 あ、そういえば速水さんは仮面ライダーのなかでは珍しくレコードを出してないらしく、その点においては佐々木さんのほうが優勢になるのだそうです。

 最後は再び参加者全員による『仮面ライダーストロンガーのうた』の大合唱で締められます。が、出演者の退場時もドアノブを触ろうとすると静電気がバチッ! ストロンガー、チャージアップでもしてたんか?


●フォー・クローバース『冬物語』(1972)


 ショーの終了後、りなさんとの撮影会がおこなわれました。私はカメラを持参してなかったので、ゆうんこりん氏が撮ってくれたんですけども。
 で、りなさんと少しお話させていただいたんですよ。「さっき速水さんは『今日の(ネットに)書いていいぞ』なんて仰ってましたけど・・・どこまで書いてもいいんでしょうか?」と伺いましたところ、りなさんは「ぜんぶいいですよ」とのこと。
「えっ、じゃあ速水さんが先輩を変人扱いしてたところもですか!」
 すると、ゆうんこりん氏が「いつものことですから」。そうか、速水さんはいつもああなのか。よっしゃ、じゃあぜんぶ書くぅ~! だって今日いちばん面白かったのは、あのくだりなんですから(笑)。
 だけどこうして振り返ってみれば、私が面白いと思った箇所というのはグダグダだったところばっかりじゃ。まぁ、これも全温度クオリティなんで仕方ないですね・・・。

●フォー・セインツ『この街で』(2008)



【追伸】わずか数日後(4月15日)のことです。ダニー石尾さんがお亡くなりになったという報が入りました。
 ダニーさんは荒木さんを語れる重要人物でもありましたが、私はダニーさんご自身も魅力的な方だと思っていましただけに大変残念です。
 さようなら、ダニーさん。

 

 

後編へつづく