8月24日、伴さん会の暑気払いがおこなわれました。4ヵ月遅れの報告ですけど、そこらへん当ブログはマイペースですので大目に見てください。
 この時期の伴さん会はだいたい9月に開催されるのですが、今年は8月です。
 去年もそうだったのですけど、暑い時期は皆さん多忙らしく、いつも来る常連さんでも欠席される方が多くなる傾向があります。だもんで今回は30名に満たない人数であったものの、そのぶん参加者にとっては座席にゆとりのある(いつもはギュウギュウ)空間ではありました。

 このたび、とくにゲストとしてお声をかけた方はいらっしゃらなかったのですが、平山満さんが駆けつけてくださいました。
 満さんは昨年秋のゲストだったんですけど、その後も会のたびに来場され、短時間お話をされるだけでお帰りになるというパターンが続いてました。でも今回は最初から最後までいらっしゃいます。ゆっくり楽しんでいかれてほしいと思っていたので、その意味ではよかったです。というか、ほぼ満さんがゲストのようなものですけれども。

 満さんがゲストというのは特別な意味合いもありました。それは皆さんもご存知のとおり、お父さまの平山亨さんが、この前月末にお亡くなりになったからです。満さんは、まだ喪が明けないうちでのご出席でありました。

 じつは私、亨さんが亡くなるちょっと前くらいに満さんとツイッターのやりとりをしていたのです。満さんに伴さん会の日程を伝えたのも私でした。お父さまの近況を随時ツイートされていた満さんですが、私が見たところ、そのほとんどはグッドニュースと呼べるものではなく、次第に衰えていくお父さまのご様子が綴られていることが大半だったと思います。
 そんななか、珍しく明るめな報告をツイートされたことがありました。私としては、その流れのまま、伴さん会でみんなに伝えてほしかったのです。
 しかし、それが叶うことはありませんでした。

 会の最初の挨拶で、伴大介さんがマイクを持ちます。もちろん平山亨プロデューサーのことにも触れておられます。沈痛な面持ちの伴さん。
 続いて満さんがご挨拶されます。先ほど書きましたように私が望んだものではなく、残念な報告になってしまいました。満さんは介護のために大変な毎日を過ごされてたご様子ですが、それでも「(親の面倒を看ることは)幸せなことです」と断言されました。ですが、きっとお疲れのことでしょう。せめてこの日は、お父さまが残された作品を大好きな人たちが集う場で、楽しんでいってほしいと思った次第です。
 満さん
ご挨拶されたあと、一瞬、私と目が合いました。「いつもどうも」と軽くニッコリする満さん。ちょっとだけホッとしました。
 そういえば満さんが「伴さんファンの皆さんは、おとなしいからなぁ」なんて仰ってました。どうやら他の会には、過激な言動をとられるファンも存在するらしい(笑)。


 平山亨さん最後の著書『泣き虫プロデューサーの遺言状 ~TVヒーローと歩んだ50年~』は発売されてからわりと早く手に入れてました。ですが、実際に私が読み始めたのは亨さんが亡くなってからでした。つまり、本当に“遺言状”として読んでるかんじになったのです。それも、味わうように、ちょっとずつちょっとずつのペースで。伴さん会があった日の時点で半分も行ってなくて、この記事を書いてる最中も途中でして・・・。
 それがいま、やっと読み終えました。これはですね、平山さんの作品が好きな人は読んでおかなくちゃマズイですよ。限定3000部でしたので入手し難いかもしれませんが、もし手に入れることが可能であれば買っておくことをオススメします。
 私の予想ですと平山プロデューサーの半生を描いたテレビドラマ、もしくは映画が作られる日が来るでしょうね(※既に漫画化はされてまして、'06年9月~'07年1月のあいだ
少年マガジンにて連載でした)。

 

 

 さて、この日、平山プロデューサー以外のことで話題になったのが『人造人間キカイダー』の新作について。角川から映画化されることが発表されたのです。
 伴さんは喜びの表情で「ここまでくるのは大変だったんだよ」と話しておられます。
 しかし・・・。
 
 本当に申しわけないのですが、正直言って私は抵抗があります。いや、そう感じている人は決して少なくはないようです。
 ひとつには、私たちが好きな『キカイダー』は、あくまでも伴さんがジローを演じていた旧作のほうである、というのがあります。あれは特撮番組史上、最高峰の人間ドラマでした。また、よく伴さんご自身も「あんなの計算したってできない」と語られてるように、旧作のキャスティングの絶妙さは奇跡的でしたからね。

 それほど立派な作品がもうあるのに、また同じのを作ることへの疑問。それも旧作に負けないように作るとしたら、そのハードルはものすごく高い。これからそれを作るのは無謀なチャレンジのように私には見えるのです。
 伴さんにとって『キカイダー』は自信作だと思いますし、新作については「お手並み拝見」のスタンスなのかもしれませんけど・・・。
 もちろん『キカイダー』が注目を浴びること自体は大歓迎ですよ。でも、その方向が新作となると不安な感情のほうが大きくて。出来る前から結論を出すのはおかしいかもしれませんが、どうしても上手くいくイメージが湧かないのです。
 で、そのハードルを高く高く上げたのは伴さんなんですけどね(笑)。いやいや、伴さんだけじゃないです。旧作は何もかもがハマりすぎていました。

 いまの時代、作り手側からすると私のような「アナログで撮ってくれないと嫌だ!」と譲らない頑固者はいちばん厄介なのかもしれないですけどね(苦笑)。昨今の映像モノ全般にいえることですが、どうしても懐疑的になってしまってるんですわ。
 だって私にとってはそこが最も重要なポイントなんだから仕方ないじゃないですか。ケガや事故に繋がるかもしれないリスクを負ってまでしてトライする、メチャクチャな撮影法が好きなんですから(笑)。昨今の技術に頼る映像では、どうしても有難みがないのですよ。

 近年、過去の偉大な作品のリメイクおよび新作を出すのが流行ってますが、それで「よかった!」と思えるものが私の知るかぎりひとつもない。新作に対する評価だけならまだいい。話題になって旧作が見直されるきっかけになるかと思いきや、むしろ旧作に傷をつけられたかのような印象のほうが強かったり・・・。
 旧作を知る人なら旧作のよさを再認識するかもしれませんが、新作しか観てない層からは誤解をされるだけでオシマイな・・・ね。
 もし『キカイダー』もそうなったら、いたたまれませんからね。


 そこで、無責任ながら「こういう『キカイダー』だったら観てみたい」というポイントを、まったく個人的な主観で挙げてみたいと思います。

設定や世界観を生かす。
 映像化してヒンシュクを浴びてしまう最も典型的な例が、この部分を軽視されてるパターンでしょう。
 とくに石ノ森作品をやるからには、やはり描くべきところは描いておかないといけませんね。でも現代の、ちょっと問題のある表現があったらすぐ叩かれてしまう「臭いものにフタ」な風潮のなか、映像化することは可能なんでしょうか?
 無難な作り方に走った結果、とても石ノ森作品とは思えない平成某シリーズみたいに残念な例もありますし。
 差別を扱う表現もどんどんやっちゃってほしいです。むしろ“差別”は石ノ森ヒーローを描くにあたり、必須項目だと思います。そもそもキカイダーなんか人間じゃないうえにロボットの「かたわ」というのがアイデンティティという特異性があります。そのうえ自らは悪の組織からの脱走者という「負い目」をまとってますから。存在自体がコンプレックスの塊なので。差別的な要素を盛り込む余地はなんぼでもあります。そこはスルーしちゃいけません。


安易にネームバリューに頼ったキャスティングは控える。
 これも
❶と同様、最もヒンシュクを浴びてしまうパターンの典型例。話題性を求めるあまり、既に色のついてしまった俳優やタレントがキャスティングされ、イメージが違うと観るまでもなく幻滅してしまいます。
 でも実際に観てみたら「おっ、なかなかいいじゃん」となればいいのですが、あんまりそういう声は聞きません。
 あと、美男美女ばっかり出すのはもう飽きましたんで。違うことやってほしいです。


フィルム撮りにし、CGはいっさい使用しない。
 もう上のほうで書きましたように、これは特撮に限らず、映画やテレビドラマなどを観る際、私が最も重要視するポイントです。
 よく言われる「CGにしかできない映像」なんか、お呼びじゃないですから。以前は「CGは必要最小限に・・・」なんて思った時期もありましたが、やっぱり嫌です。ひとつも使わないでほしい!
 特殊効果はその時代ごとに新しいものを採り入れてきた歴史があります。でも、なんでもできるCGはさすがに飛び道具だと思います。あんなのを見せられても心には響かんのです。映像化するからには視覚的な驚きが欲しいのですよ。
 ついでに言うと、低予算で作るのがいい。少ないお金と限られた技術で、なんとかしてそれっぽい映像を作ってほしい。結果、チープになってもいいではありませんか。そのかわり、そこには温もりがありますから。
デジタル技術に頼ったものじゃなく、チャレンジするところが見たいんです。
 もしもキカイダーの腕がもげるような場面があれば、なぜかお腹のところがボコッと膨らんでるような描写もいりますね。


 個人的には『忍者キャプター』のほうで新しいのを作ってほしかったです。あれなら『キカイダー』ほど厳しい目で見られることはないでしょうし、伸び代だらけ。大いに「いじりがい」があると思います。
 もともとがマイナーな番組ですから存在を知らしめるだけでオッケー牧場。内容的にも、あまりこだわらず気楽に作っていけそうです。
 強いてあげればコスチュームでしょうか。キャプターで最も重視したいのは、動くたびにプラプラするのが危うい魅力のバイザーです。ビシッとしたのはダメです。そこは譲れません。土忍キャプター4なんかは、ちゃんと顔のお肉が微妙にハミ出すように設計する必要があります。
 でも、間違って興行的に成功しちゃったら「なんか違うな」って思っちゃう。だってキャプターだもん(笑)。


 すいません、こういうこと書くと快く思わない方も多いかと思います。ですが、過去の名作を冠すれば話題になり観る人も多いだろうという流れならNOですよ、ということはハッキリ示しておきたいのです。
 だけど、どうせ新作が出るのなら、私のような者を「参りました」と言わせるようなやつを・・・・・・いやいや、そうじゃないですね。私基準でズラズラと勝手なことを書いてますけども、それに合わせるのは違いますよね。
 やっぱり石ノ森章太郎さん、平山亨さん、そして伴さんら旧作に携わった方々が観ても喜んでもらえるようなものになったら、まずは成功ではないでしょうか。
 それに、私が「こういう『キカイダー』だったら観てみたい」として挙げたやつを本当にやったら赤字の可能性大ですわ。
 まぁ、本音を言うと採算度外視でやってほしいのがヤマヤマで、上記❶~❸のいっこでも外れてたら観ない可能性が高いんですけど。あと、できれば他のやり方で『キカイダー』の凄さ・素晴らしさが多くの人に伝わるならそっちのほうがいいと私は思いますし、高い知名度のわりに正当な評価が浸透しているとは言い難い作品でもありますので、この記事を読んだ方で未だご覧になったことがないor観てはいたが記憶に薄いという向きには是非とも'72年度版の作品を観賞いただきたいものであります。



 話を伴さん会に戻しましょう。
 いつもより参加者が少なめではありましたが、そのぶん伴さんと触れ合える機会も比較的多めであります。もっとも、私の場合は参加率が高いので控え目にしてましたが、なかなか来れない人には絶好のチャンスになります。
 久しぶりに訪れた20代男性はネットでゲットしたというイナズマンFの変身ベルトを持参、伴さんにサインを入れてもらい満足顔・・・というか、マジックのインクが乾くまで慎重に扱っておられ、その目は少々血走っているようにも見えました(笑)。きっと家宝にすることでしょう。
 なお、たしかイナズマンはベルトで変身する設定ではなかったハズだと思います。


 そして今回もムトウユージ監督がお越しでした。この少し前、テレビ朝日『マツコ&有吉の怒り新党』において「いつもと違うクレヨンしんちゃん 」と題され、トラウマになるほど怖いと囁かれる伝説の回が特集されていました。
 いつも当ブログへコメントをくださるのりたまとうさんさんが、この放送をご覧になった感想をわざわざ報告してくださいまして、そのことをムトウ監督にお伝えしたんですよ。
 監督いわく「最初に企画の話を聞いたとき、『(“クレしん”を語る題材として)それは違うだろう』と思った」とのこと。でも好評だったそうで、監督はゴキゲンのご様子。
 のりたまとうさんさんは私のブログでムトウ監督を知り、あの番組でムトウ監督を凄いと思ったという旨のコメントをくださいました。それが私としては嬉しかった、と話しましたところ、監督は「ぼくも嬉しいです! (^-^)/」と満面の笑みでお応えくださいました。
 のりたまとうさんさん、ムトウ監督はとっても楽しい方です。いつかお越しくださいね。

 伴さん会がおこなわれる会場は、水道橋にある食堂です。毎回、そこの料理も楽しみにしております。
 この日は暑気払いということもあり、デザートとしてガリガリ君をはじめとするアイスキャンデーが配られました。私がもらったのはガリガリ君の梨味です。これは、そこそこ美味しかった。いっぽう、伴さんが食べていたのはガリガリ君とは別のものだったと思いますがゆずあずきバーなる逸品。
 ところが、これが伴さんにはお気に召されなかったらしい。
「ゆずとあずきが合ってない! これ、書いといてね」
 あわれ、ゆずあずきバーはキカイダーのダブルチョップの前に一刀両断されてしまいました。しかも私へは「ブログに書いて」とのご指令つきであります(笑)。
 参加者のあいだでも、こんな会話がありました。私が「ガリガリ君、もう30歳超えたらしいですよ」と言いましたところ、Mさんは「じゃあ『ガリガリさん』って言わなきゃ」。
 食堂の料理は美味しかったのですが、存在感で圧勝してしまうガリガリ君。あれが60円とかそのへんの値段なのですから、敵わないですよね。

 ――とまぁ、今回のレポートはここまで。次回の
伴さん会は、かなりレアなゲストがお越しの予定です。

     

●二次会で女性参加者が歌っていた『キカイダー』の挿入歌『悪魔が今日も笛を吹く』。
 この歌、なぜか女性ばかりに歌われています。

 

ごめん今回の記事ね、upすべきか否か、とてもとても迷いました。もしかしたら伴さんに怒られてしまうかもしれない覚悟で書きましたから。もうね、私は次回の伴さん会にて、大車輪投げで3回くらいぶっ飛ばされたうえでデンジエンドを浴びてしまう可能性がありますので。そしたら一巻の終わりです。
 どなたか、バラバラに破壊された全温度チアーさんのネジとか歯車とかを拾ってくださいますか?

この日のもようは、公式サイトの
写真館にて画像が掲載されています。