高校時代男子校で彼女ができなかったことを悔み悔んだ挙句、4浪し、いわゆるマーチ法学部に入学した。
ただでさえ年がいってて周囲から浮いているのに、仮面浪人を決意して、さらに周囲から遠ざかっていった。
このとき自分には友達と呼べる人間はほとんどいなかった。
だから、自分の馬鹿げた選択に対し、誰も忠告しなかった。
今みたいにネットがあれば、当時の環境をネットで相談すれば、皆猛反対するだろう。
一発逆転なんてできるわけがない。
たとえ合格しても高校生の彼女などできない。
粛々と学校を卒業し、就職活動をすべきだ。
と。
まだ若かった当時の自分はそんなことはこれっぽっちも浮かばず、ただひたすら「理想の彼女を作るため」だけにひたすら難関資格を目指していった。
司法試験の勉強は主に、テープ学習だった。
授業を録音したテープをテープレコーダーに早回しして聞くという、当時にしては画期的な勉強方法だった。
自分はこの勉強方法に傾倒し、毎日11時間くらい、耳が遠くなるくらいひたすら聞きまくった。
授業1コマが80~90分で2コマで1回だったが、一日2回分きいてた。
早回しで聞いても、講師の話す言葉をほとんどテキストにメモしていったため、1回の授業に4~5時間費やした。
とてもつらい作業だったが、充実していた。
法律の基礎が自然と身についた気がした。
この「気がした」というのが、自分の失敗だったことを悟るのは、ここから5年がたった後のことだ。