あれからちょうど1ヶ月。

ホワイトデーを迎えた。


「おはよう」

「おはよう。杏菜、先輩から何か貰う?」


その日は卒業式で、クラスの子は

先輩から名札やハチマキを

貰おうとしていた。



「ねぇ、武井いるよ」

振り向くと、男友達と話す彼がいた。


別に期待している訳ではない。

1ヶ月前、あんなことあったし。


「琴名、トイレ行こう」

「うん」

なんかずっと武井を見つめているのも

気持ち悪いから。


ふと、琴名が何か言いたげな顔をしている

ような気がした。



数分後―。

うちの机に紙袋が置かれていた。


「これ、武井からだよ。あたしも

お返しにもらったし」


うそ…。


中には、マドレーヌなどのお菓子。


すぐに席を離れて、一歩ずつ彼に近づいた。

「武井、お菓子ありがとう」

彼は振り返ることもなく、教室を出ていった。

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けど、落ち込むことはなかった。

きっと、あの手紙の内容を

理解してくれたはずだから。


だから、ありがとう。

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