2月13日―。

夜8時、明日のバレンタインに向けて

チョコを作っていた。


「できた」

作っていたのは石畳チョコ。

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雑誌を見てクッキーとかいろいろ迷った

けど結局これにした。


スタンダードなやつだし。


「杏菜、誰か好きな人いるの?」

完成したチョコをラッピングをする姿を見て

興味津々な母。


水色の箱。

水色と青のリボン。


普通はピンクや赤だけど照れ隠しに

水色にした。

菜の花畑のアンズジャム-img_rap02_2.gif


母の言う通り“本チョコ”。

でも友チョコとの違いはラッピングだけ。

これも、同じ理由。


「部活の友達に渡すやつだよ」

とりあえず言ったごまかしの言葉。



さっき、同じクラスの武井雅人に渡す

チョコを作っていた。



部屋に戻ったうちは手紙を書いた。

チョコと一緒に渡す。


武井はケータイを持っていない。

直接告白する手もあるけど同じクラスだから

照れ臭い。


机の引き出しからミッキーとミニーの

レターセットから水色の封筒と1枚の紙を

取り出した。

緊張で手が震えながらも一文字一文字

丁寧に書いていく。



     武井へ
いつも「嫌い」って言ってるけど

実は武井のことが好きです。


チョコの形ちょっと悪いけどよかったら

食べてください。


返事待ってます。

        2-5 A・S


夜中まで何度も書き直してやっと封筒に

入れることができた1通。

いつも意地張ってるから少しは

素直になりたい。

来年だと受験で言えなくなるかもしれない。


だから君に告白しようと思ったんだ。



でも、“付き合って”とは書かなかった。

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