電子ブック
今日の朝日新聞に、ハーバード大学ロバート・ダーントン教授に聞くというインタビュー記事がありました。電子書籍と紙の本とは共存する、という趣旨の話。その中で注目した発言がこれです。
《18世紀のパリの歌について本を書いた時、友人に歌ってもらい、ネットで公開した。電子書籍ではこうしたことが容易で、多くの学者が同様のことをしている。読者も本に対して受身でなくなる》
まだ iPad も Kindle も持っていないので、電子ブックの使い方を知りません。アイパッドは、アップルの売店などでちょっとだけさわってみたことがあります。ソニー・リーダーもビックカメラでのぞいてみました。買って買えないこともないけれど、こういう機械で本を読む、という感覚になじめなくて、購入をためらっているのです。友人の iPhone には、泉鏡花の作品集が入っていてルビまで付いているのを見せてもらったこともあります。
ダーントン教授の言葉に反応したのは、そうか、こういうものなら電子ブックで読んでみたいと思える本があることに気が付いたからです。
ずっと前から、NHKの語学番組でなぜ「音声学」の授業がないのか不思議に思ってきました。視聴者が少ないだろうという予想はつきますが、テレビの番組で、生徒と先生が一緒になって稽古する、ピアノのレッスンのような方式で音声学の授業をやってくれたら、ぜひ勉強し直してみたい、と思い続けていました。
服部四郎『音声学:カセットテープ、同テキスト付』(岩波書店、1984)という、立派な教科書があります。カセットテープの音声は、服部先生ご自身が吹き込んだもので、資料としても貴重きわまりないものです。M のオトが、有声・無声の順に発音されるのを耳で聞いていると、妙なものですが。
画面を見ながら、クチの形と音声を一緒に覚えられたら、さぞや素敵だろうと考えていたのです。電子ブックではそれも実現しそうです。
夢はさらに広がります。西洋音楽史、日本民謡大系、などなど、音が入っていれば理解がうんと深まる分野も電子ブックで読める時代がやってきたということです。もちろん動画も入れられるはずですから、「ヴェルディ・オペラの見どころ」などというのも可能ですね。
初めから動画・音声込みで企画を立てて、電子ブックを作るということをしたら、おもしろい本がたくさんできるはずです。私が思いつきそうなことですから、もう、各社で着手しているでしょうけれど。「シルクロード美女紀行」(文・椎名誠)なんていう電子ブックが売り出されたら飛びつきますね。
著作権という難儀なハードルをどう乗り越えるかが大問題だということは理解しています。法律の方を変えるしかありません。
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