本の購入いまむかし
本は本屋さんで買う、というのが若い頃からの習慣です。まあ、それ以外に入手方法がなかった。高校生のころ、先生の勧めで村井・メドレーの英作文の練習帳を手に入れたときもオビキュー書店に注文し、1ヶ月後くらいに届いたものです。黄色い表紙の薄い本でした。練習問題が毎ページ(2ページに1問?)にあって、その日本文を書くための表現がいくつか紹介してあるだけで、練習問題の模範解答がないというシロモノでした。「正解というものはない」ということを教わったのが収穫と言うべきでしょうが、自分の書いた英文が通用するのかしないのか、はなはだ心細い気持ちになったのを覚えています。
東京・神田神保町界隈で出版社勤めを続けられたのは、本を買うという点で言えば、宝の山で働いているようなものでした。歩いて数分先に、三省堂書店、東京堂書店、冨山房、書泉グランデなどの新刊書店が軒を連ねているのですから。さらに、小宮山書店、田村書店、大屋書房、八木書店、大雲堂、一誠堂、北沢書店、古賀書店、崇文荘、などなど、古書業界の大どころが居並んでいます。本好きにとっては聖地と呼ぶべき一帯でした。
田村書店でアンドレ・ラランドの哲学辞典を購入したのは1993年2月のことでした。4000円。B5版縦長の1400ページもある辞書です。PUF(フランス大学出版)のもの。大昔、手紙で注文を出し、船便を何ヶ月も待って、しかも目の玉の飛び出るような値段だったころに比べれば、もったいないほどの掘り出し物でした。
これは、偶然目についたから入手できましたが、捜している本が見つからなくてイライすることもあります。古書組合の売りたて目録なども送ってもらっていますが、パラパラめくって面白そうな本を注文することの方が多かった。
捜し物を見つけるのは、いまやネットの独壇場ですね。無いということがわかるのも、ムダが省けて便利です。掘り出し物に当たる面白みが少なくなったということもありますがね。
最近、アマゾンで見つけて、注文を出したら、翌日、なんと岩手県一関市の古本屋さんから宅急便で届きました。『国語学辞典』(1960年の初版本)、送料込みで2800円くらい。届いた荷物をこわごわ開いたら、堅牢な函に入った美本があらわれました。おもわずニンマリしてしまいましたね。
最近は、文庫本の絶版が早いので、うっかり見過ごすと店頭から消えてしまっていることがあります。そういうときも、ネットで購入するのが便利になりました。
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