シャガール展と上村松園展
10月5日、東京藝術大学美術館で、「シャガール展」を見ました。1点を除き、パリのポンピドー・センター所蔵作品だそうです。同時代のロシアの前衛作家たち(カンディンスキー、ゴンチャローヴァなど)の作品もありましたが、シャガールのものがほとんどでした。堪能しました。
ニューヨーク、メトロポリタン歌劇場のこけら落とし公演『魔笛』の舞台美術用原画が大小50点ほども展示されていました。ルチア・ポップ(夜の女王役)やヘルマン・プライ(パパゲーノ)、ヨーゼフ・クリップス(指揮者)たちと一緒にシャガールが舞台に立って、観客の拍手を受けている写真もありました。1967年とあったと思います。
シャガールの絵画は、「イカルスの墜落」のように、タイトルも構図も知っているのはそんなにありません。画集やテレビ番組などで目にしたことのある、なつかしい作品が一堂に会しているのは壮観です。恋した女を奥さんにした、幸せの絶頂だったころの幸福感溢れる絵が素敵でした。その恋女房を亡くしたあとの、後追いするのではないかと思わせるほどの悲壮感ただよう絵にも感動しました。
ナターリア・ゴンチャローヴァという女流画家の絵はこの展覧会で初めて目にしたのですが、20世紀初頭のロシアの画風を代表する人なのだろうと思います。力強い筆捌きが印象的でした。
10月14日、皇居東御苑にある国立近代美術館で「上村松園展」を見てきました。10時半ごろ美術館に到着したら、切符を買う長い行列ができていて、40分待ちということでした。
10代、20代から、60代後半まで描き続けた、美人画をたくさん見ることができました。「新蛍」(「にいぼたる」と読むのでしょうね)というモチーフの、初夏の夕方、庭にたたずむ和服姿の女人を描いた絵がたくさんありました。代表作「序の舞」のような、それ一作でも日本絵画史に残るような傑作が、両手の指で足りないほどあるのですね。「人生の花」「砧」「楊貴妃」などなど。私に好ましかったのは、「鼓の音」という二つの同名の作品。同じポーズで、今しも鼓を打とうとする夫人を、着物と帯の色合いを逆にして描いたものでした。もう一つは、前から好きだった「晴日」という作品。伸子張りをしている若い奥さんを描いたもの。
東京という都会は、こういう展覧会がしょっちゅうあるので、便利この上ありませんね。ありがたいことです。
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