花筏
「花筏(はないかだ)」は、「散った桜の花びらが、筋になって川を流れ行くさまを筏に見立てたもの」だそうです。近くの大学構内にある噴水の、盆の形をした受け皿(と言うのかしら)にたまった水の上に、花びらが散り敷いてゆらゆら揺れているのを見て、これが花筏というものか、と思って辞書を引いたら、上のように記述されていました。
うつくしい言葉ですが、流れ去るのならともかく、停滞している花びらの群れは、ちょいときたならしいものです。このあたりの桜はもうすっかり散ってしまいました。鬼貫(おにつら)に、こんな句がありました。
去年(こぞ)も咲き 今年も咲くや桜の木
こういう句の味わいが分かる年齢になってしまいました。
おとといもずいぶん寒かったのですが、駅へ行く道すがら、思いがけずウグイスの鳴き声を聞きました。心もち弱々しげに聞こえます。ウグイスだって、この寒さにはびっくりしているのでしょうね。
今朝はみぞれが降ったそうです。知らずに白河夜船を決め込んでいましたけれど。暖かさが戻ってくるのを願って、桜の句をならべます。
寺々を通りぬけけり花ざかり 白雄
人恋し灯ともしごろをさくらちる 白雄
しばらくは花の上なる月夜かな 芭蕉
浄水場遠き桜の落花浮く 橋本美代子
白雄「寺々を」の句、つい先日通った、駒込から本駒込にいたる、本郷通りの光景を彷彿させます。
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