シャーリーズ・セロン | パパ・パパゲーノ

シャーリーズ・セロン

 『バベル』(ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、役所広司、菊池凛子などが出たオムニバス風映画)の脚本を書いたギレルモ・アリアガが初めて監督をした映画『あの日、欲望の大地で』という映画を見ました。しかし、この邦訳はなんとかならなかったものでしょうか。原題は The Burning Plain(燃える平原)」ですからね。実際、荒涼たる平原でトレーラー・ハウスが爆発炎上するところから映画が始まります。


 この、燃え尽きたトレーラー・ハウスから男女の死体が発見され、現場を見に行った兄弟(死んだ男の子どもたち)とその友だちが、死んだのが親父と、隣町の主婦だったことを語ります。死体が出てくるわけではありません。科白だけで、死んだ二人が二つの街の真ん中でデートしていたことを明らかにします。あとではっきりしますが、この二人を演じるのが、キム・ベイシンガー(『LAコンフィデンシャル』の娼婦役)とヨアキム・デ・アルメイダ(顔を見れば、ああ、あの人とわかる、スペイン系の脇役男優、実際はポルトガル出身だそうです)です。


 それとは別に、海岸のレストランの有能なチーフ・マネジャーをしているシャーリーズ・セロンが、複雑な過去を持った女として登場します。いきなりヌード姿をスクリーンにさらすのでびっくりします。コックのひとりと浮気した、その朝の光景から、もう一つの物語がつむがれていきます。


 ふたりの女の物語が、どういうふうに交錯するかが、この映画の見どころですが、平行に進んでいるように見える、ふたりの人生が、時間差のある平行線だと分かるのは、始まって30分くらいです。


 キム・ベイシンガーの長女マリアーナを演じたのがジェニファ・ローレンスという、まだ20歳そこそこの女優です。この娘が物語全体のキーになるので、相当な演技力を要求されますが、見事に演じました。この役で、ヴェネツィア映画祭の「マルチェロ・マストロヤンニ賞」に輝いています。


 テッサ・イアというラテン系の美少女(12歳くらい)も上手な役者でした。


 この、4人の女の人生がからみあって、複雑な物語が展開した映画と見ることもできます。シャーリーズ・セロンが、最後にテッサに見せる表情が、科白はないのに、雄弁に希望を表現していました。