白昼堂々
マドリッドの地下鉄で、連れ合いはドアの近くに立っていて、私は中のほうにいた。どの駅だったか、乗り込んできた若い女が、まだ20代だろうなあ、スッと、ドア近くの連れ合いのそばに寄っていくのが見えました。あれ? これはひょっとするとスリか、と思ったのは見ていた私だけではなかったようです。身体をほとんど押し付けるように前に出てくるのを、身をかわしながら離れることに成功していました。その間、かのスリ女は、無表情のまま。「おやバレたか、これは相手を間違えた」、というような変化をこれっぽっちも見せないのですね。商売だから、うまくいくときもいかないときもあるわさ、というような按配でした。
別の日、別の駅で、停車して開いたドアの反対側に立っていた私のところへ、こんどもまた、若い女(先日とは明らかに違う)、これも20代だろうなあ、目を見張るというほどではないけれど、まずまずの別嬪が、ツカツカと寄ってきました。脱いだカーディガンを両手に持って、手の動きを隠しています。私は、小さいショルダー・バッグを腹のところにもってきていたのですが、それを目がけて、ぐいぐい身体を押し付けてきます。あとずさりし、身体をねじって身をかわしましたよ。この女も無表情なまんま、次の駅で降りていきました。なんというか、1日の収穫のノルマがあるような、それにしては投げやりな仕事ぶりでした。
悪びれずに押し出してくるので、気の弱いカモなら身がすくむのかもしれません。私は、気が強いわけではないのですが、あんまり見え透いた手口なので、即座に対応することができたというわけです。これから観光シーズンたけなわになりますから、お出かけの予定の方はくれぐれもお気をつけてくださいね。
地下鉄を利用する現地の人々は、スリ行為(未遂)に気がついてはいるようでしたが、さしたる反応も見せません。美少女(これがまた数多いの)に目をとられて、そのスキをねらわれないようにしなければなりませんね。
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