アイアコッカ | パパ・パパゲーノ

アイアコッカ

 リー・アイアコッカの自伝『アイアコッカ:わが闘魂の経営』(ゴマ文庫)が復刊されたのを機会に再読しました。1985年にダイヤモンド社から単行本で出版され、その後、新潮文庫に入っていたもののようです。単行本の評判が高かったので、出た直後に読んだ覚えがあります。
 
 自動車が好きで、フォードに入社し、たちまち社長になってしまう。ところが、社主のフォード二世にうとまれて首になります。すぐさま、競争相手のクライスラーに会長として入り、苦労の末、利益の出る会社によみがえらせます。この自伝は、まだクライスラーに在社中(85年)に書かれて、全米のベストセラーになりました。


 波瀾万丈の人生ですが、頭を使い、体を動かし、エネルギッシュに前進する様子は、ワクワクするほど面白い。今や、ジェネラル・モーターズ(GM)までが政府の援助を乞うほど、アメリカの自動車業界は破滅寸前の様相を呈していますが、84歳でなお矍鑠としているこの名経営者は、どんな気持ちでしょうね。もっとも、本書のなかで、20世紀末までアメリカの自動車業界は持つまい、と予言もしていました。そうならないための提言もたくさん書いてありますが、どうやら聞く耳を持つ人がいなかったようです。


 当時も感銘を受けましたが、再読して、やはりこの文言を引用したくなります。


 いくら人物を見抜くのがうまくても、ちょっと会っただけでは絶対に見抜けない資質が二つある。一つは、その人物が怠け者かどうか。もう一つは、決断力があるかどうかだ。……この二つを測定できる機械があれば、どんなに経営者は楽だろう。それこそ、おとなと子供の最大の違いだからである。


 翻訳は徳岡孝夫。毎日新聞の名記者だった人。読みやすい訳文です。ただし、この文庫版には、信じられない誤植がときどき出てきます。単行本か、新潮文庫の版面をスキャンして原稿にしたものでしょう。「実力を発揮」とあるべきところが「実力を発拝」となっていたりする。「工場」が「エ場」(エがカタカナ)になっていたり。


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