レシピとレセピ
料理やお菓子の、作り方の手順を示したものを「レシピ」と言い出したのはいつごろからでしょうか。そんなに昔のことではないような気がします。英語で recipe と綴るので、見た目はフランス語から入った語のようですが、フランス語ではこういう単語はないようです。receive (受け取る)という単語の同類です。英語では、薬の「処方箋」のことも指すようです。
カタカナで「レシピ」とあって「レ」にアクセントがある場合、日本語の話し手なら、まず例外なく真ん中の「シ」が無声化します。「ピ」の p に同化するからです。もし「レセピ」と書いてあったら、セは無声にならない。じっさい、アメリカで長く暮らした日本人の奥さんが、アメリカ人に聞いた料理法を大学ノートに記録したものをテレビで見たことがあります。表紙に「レセピ」と書いてありました。
無声化というのを文字で理解してもらうのは難しいですが、「シ」の発音の構えをしながら、母音を出さないやり方です。シが無声化するケースをいくつか(左側に)あげます。対して右側は、同じような環境でも、k が g の場合、無声化は起きません。
シカケ(sikake:仕掛け) シガイセン(sigaisen:紫外線)
コシカケ(kosikake:腰掛け) ホシガル(hosigaru:欲しがる)
ヒッコシ(hikkosi:引っ越し) ワガシ(wagasi:和菓子)
「レシピ」のように、シとピが並ぶ単語は日本語にはまずありません。というか「ピ」で終わる語も数えるほどしかない。出費、突飛、安否、猿臂、など。
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