わらしべ長者 | パパ・パパゲーノ

わらしべ長者

 「まんが日本昔ばなし」の「わらしべ長者」(YouTube)を見ると、観音様にお参りした運の悪い男が、わら1本から、立派な屋敷と、お嫁さんまでもらって長者になった、めでたしめでたし、という話になっていました。

 はじめに、転んでつかんだのがわら1本、アブがうるさいので、そのわらにつないで歩いていると、泣き止まない男の赤ん坊がいる。その子にあげると泣き止む。お礼にミカンを3個もらう。水がなくて苦しんでいるお嬢さんにミカンをあげて、渇いたのどを潤させた。そのお礼に、絹の反物を三巻きも貰う。反物をねらった別の男が、無理やり死にかけた馬と交換してしまう。馬を懸命に撫でさすると馬が生き返る。その馬を欲しがる金持ちがいて、見ると、この前ミカンをあげた娘の家だった。馬を買ってもらった上に、娘の婿になってくれ、と言われる。いつまでも、わら1本を大切にして「わらしべ長者」と呼ばれるようになりました。

 わら → ミカン3個 → 絹3反 → 馬 → 家(と嫁)

このように「等価交換」を重ねながら、手にするものの価値が上がっていきます。しかし、反物が馬と交換されるところに、いささか無理な飛躍が感じられる。「日本昔ばなし」では、死にかけた馬をいつわって、悪辣な手段で反物と交換する、というふうに、つじつまを合わせていますが。

 もとの話は「宇治拾遺物語」(や「今昔物語」)にあるというので、読んでみました。

 馬は陸奥の国産の名馬だとあります。それが貧乏な男(すでに「白い上等な布3巻」を手に入れています)の目の前で死んでしまう。主人は代わりの馬を手に入れて目的地に去ってしまいます。下男が残って、死んだ馬の皮を剥ぎ、それを持って主人を追いかけたものか否か、思案しています。それを見て、貧乏男のほうから、布一巻きと死馬との交換を申し出るのです。男には成算があった。死んだ馬を生き返らせてくれるよう、初めにお参りした観音様(奈良の長谷寺の)に必死でお願いします。その願いが聞き届けられて、名馬がよみがえった、という話になっていました。残りの二巻きの反物は、旅費や、馬の餌代になる。その後、都で、家と馬とを交換することになります。

 反物と馬との交換の説得力は「宇治拾遺」のほうに軍配をあげたくなりますが、まだ、やや無理があるような気がします。目くじらを立てるほどのことではないでしょうが。