サイカチ | パパ・パパゲーノ

サイカチ

 テレビから、「サイカチの実を干したもので脂よごれを落とした」という音声が聞こえてきました。サイカチは、私の方言では「シャガジ」(このガは濁音。鼻音にあらず)と言って、子どものママゴトに使うものでしたから、ちょっと驚きました。一緒に見ていた、隣の県の出身者が「食器の油を落とすのに使った」と覚えていましたから、むかしは、洗剤として利用されていたようです。


 ネットで調べてみたら、その通りでした。ウィキペディア にリンクを張っておきますね。利尿剤にもなったようです。


 どんなママゴトかというと、冬、雪のかたまりをしゃもじで叩いておかずのようなものを作るのです。サイカチの莢(さや)――ソラマメの莢くらいの長さで、木になったまま茶色に変色して地面に落ちたもの――を混ぜて、硬くした雪の上でトントン叩くのでした。茶色に着色されて、ねっとりした、見ればうまそうなトロロのようなものができました。この遊びを、「サトペンペン」あるいは「サトピャンピャン」と言いました。


 漬物や、野菜などをスライスすることを、これも私どもの方言で「はやす」と言いました。いつか紹介した『秋田のことば』(無明舎出版)を見ると、「野菜などを切ることをいう」とあって、『万葉集』にも例があるのだそうです。語源は、「お囃子」の「囃す」ではないか、と教えてくれた方がありますが、万葉集にあるとすると、順序は逆なのかもしれません。


 しゃもじで雪を「はやして」、おかずのようなものを作ったというわけです。ついでながら、「しゃもじ」のことは「へ(箆)」と呼びました。いまや秋田の夏の風物詩になったかのような、アイスクリーム(シャーベット)売りのことを「ババヘラ」という、あの「ヘ」です。どういうわけか、「夫より年が上の妻」のことも「へら」と言う。両方とも「」にアクセントがあります。こちらは、語源は見当もつきません。


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