本の処分 | パパ・パパゲーノ

本の処分

 本棚の本が、奥と手前の2段になりだすと、奥にある本はよっぽどのことがないと取り出したりしなくなります。たいていのブックシェルフは、奥行きが割合深く作ってあるので、どうしても2段に置くことになる。狭い家に長く住んだので、やむをえぬ成り行きでありました。


 床に平積みにすることは意識的に避けました。収拾がつかなくなるからです。本が増えてきたころに古本屋さんにきてもらって、まとめて売るということを、何度も繰り返しました。あらかたアルコールに化けましたけれど。買った値段の5%かそれ以下で引き取られていく、自分の本をみるのは切ないものですが、なんでも慣れるもので、そういうものだと覚悟が決まれば、痛みも感じなくなりました。


 本を処分するのは、その道の大家が説くように、古本屋に売るのが一番だと、今でも思います。首都圏の古書店同士の連絡は非常に緊密なようで、どんな書物でも、それを必要とする買い手を顧客として持っている古書店に結局は流れていくようです。自分が手ばなした本を、どこかの古本屋で見つけたことはまずありません。


 本を処分する理由がもうひとつあります。無理をして(見栄を張って)買った全集本などが、読まないまま何年も書棚の一隅を占拠していると、本自体から発せられる圧迫感がときにうっとうしくなる。それを除去したくなるのです。森鴎外の全集などはそうやって我が家から出て行きました。この先、ふたたびページを繰ることはないだろうと処分したものもあります。読みたいときには文庫本を買いなおせばいいや、と思って売り払った全集もあります。


 私がその本を買ったというのも、なにかのご縁があったと思うことにして、今日もまた、書店をめぐっているのです。


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