落語ふたたび | パパ・パパゲーノ

落語ふたたび

 立川談志は今年73歳になるのでしょうか、ガンを患ったにしては、依然、矍鑠(かくしゃく)たる活躍ぶりです。若いころから毀誉褒貶(きよほうへん)の絶えない落語家でした。でも、CDもDVDもたくさん出ていますから、その話芸に親しむ人は少なくないようです。ずいぶん前になりますが、TBSテレビだったかで、夜中に「大工調べ」を演じているのを偶然目にして、そのまま最後まで聞いてしまったことがあります。大工の棟梁と因業大家とのやりとりが、感情がうねるように演じられて、感激したものです。
 
 その談志師匠が、まだ若いころ(30歳直前)、『現代落語論』という新書を三一書房というところから出版しました。出てすぐに読んだ記憶があります。「落語とは人間の業(ごう)の肯定である」という、その後、談志のマニフェストのように称されたテーゼが開陳されていました。もっとも、その当時も、いま思い出しても、「業の肯定」というのが何を指したものか、よくわかっていません。ただ、若書きの熱気が充満した、ヤケドしそうなほどの本でした。今でも読む人が少なくないようです。現在の三一新書には入っていません。講談社から出ている「談志の遺言大全集」というシリーズに入っているようです。
 
 YouTube で、「談志 落語」と入力すれば、いくつもの動画が出てきます。また、「大工調べ」という噺は、いろいろな落語家の画像で聞くことができます。
 
 最近、あるきっかけがあって、落語の文庫本を集め、それを読み出しました。昔から、ラジオで聞いてきた噺の活字版です。


 堅物の若旦那を、「観音様の裏にある、お稲荷さまのおまいりに行こう」と誘い出して吉原へ連れ出す「明烏(あけがらす)」や、橋から身投げしようといている文七に、訳あって借りてきた五十両を(泣く泣く)くれてやる「文七元結(ぶんしち・もっとい)」や、浜で拾った金を女房が「夢でも見たんじゃないか」と言って、三年後に亭主に差し出す「芝浜」など、を読むと、日本人の行動や心理というもののカタログを見せられているような気がします。演者によって、細部がさまざまに違うので、違いに着目しながら聞くのも一興というものです。


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