レル敬語 | パパ・パパゲーノ

レル敬語

 電車で見かけた週刊誌の吊り広告に、こんな見出しがありました。
 
 天皇陛下と雅子さま、傷つかれたのはどっち?
 
 「傷つく」を敬語で言おうとすればこれ以外に言いようがないでしょうが、一見してヘンだと感じました。
 
 一般には「レル敬語」というものですが、最近これが多用されていて、私などには違和感があります。
 
 走る:走られる お走りになる
 歩く:歩かれる お歩きになる
 書く:書かれる お書きになる
 読む:読まれる お読みになる
 
 「お~になる」という敬語の形式のほうが、敬度が高いと感じる人が多いはずです。それが高いと、敬語を使ったことによって一種のよそよそしさが伴います。おそらくそれを嫌って「ラレル・レル」で親近感と敬意とを一緒に表現しようとしたものでしょう。
 
 ただ、なんでも「レル敬語」で済ましていいか、と言えばそうではないと言わざるをえません。
 
 今年はどちらにご旅行に行かれたんですか?
 
と聞かれると、反射的に「俺はイカレてなんかいない」と思ってしまいます。
 
 天皇陛下と雅子さまについて表現する場合の敬語は、敬意の度合いが高くてもかまわないはずですが、さっきの表現を、
 
 *お傷つきになったのはどっち?
 
とは言えませんね。私が編集デスクなら「傷ついたのはどっち?」と敬語なしで表記しそうな気がします。


 レル敬語は、受身と同じ形になるので、誤解のもとになります。
 
 その話を彼女にしたの? 泣かれたでしょう。
 
などは、泣いたのはたしかに彼女でしょうが、尊敬よりも「迷惑の受身」の意味のほうが強いように感じます。


てんとうむし        てんとうむし        てんとうむし        てんとうむし        てんとうむし