今年のミステリ
年々ミステリ小説を読むことが少なくなりました。今年も、読んだと言えるのはわずかに2冊です。
フレデリック・フォーサイス『アフガンの男』(上・下、角川書店)、トム・ロブ スミス『チャイルド44』(上・下、新潮文庫)。どちらも面白いことはおもしろかった。
『アフガンの男』は、ニューヨークからロンドンへ向かう「クイーンエリザベス」号で、G8だかの会議が予定されている、その客船をそっくり爆破してしまう計画をアルカイダのような組織が立てていて、それを、どうやって阻止するか、がポイントになっていました。パシュトゥーン語(だと思う。アフガニスタンの言語)を自由にあやつり、顔色もアフガン人によく似たイギリス人が大活躍します。船を目標にするための武器は、別の船を使います。自爆船。このカモフラージュの工夫が世界中の港や航路を使って展開されます。
生まれた村の住民が、一人残らず殺されてしまって、たまたま村を離れていて命が助かったアフガン人の若者が重要な役目をにないます。
『チャイルド44』は、旧ソ連の、飢餓状況におちいった寒村で食糧をどうやって調達するか、というところから話が始まります。雪の平原を猫が1匹走り去る。その猫を(捉えて食うために!)少年が追いかける。ところが、その少年が逆に袋をかぶせられてつかまってしまいます。人間も「食糧として」つかまることもあるような状況がプロローグとして出てきました。
戦後になって、何人かの少年・少女たちが奇妙な殺され方をする、その捜査にたずさわる警官が、気まずくなった妻と協力せざるをえない状況に追い込まれて事件の解決にあたろうとします。ちょっと陰惨な話の連続ですが、ストーリーとしては、プロローグの話にきれいにつながって終わります。ものすごく手のこんだ小説でしたが、作者の年齢が29歳だと聞いて、びっくりしました。よっぽどたくさんの先行ミステリーを読み込んだ、40代後半くらいの「新人」かと思っていましたから。おそるべき才筆の登場です。
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