ハガキ通信
今は、ケータイが全盛で、若い人たちばかりではなく、中高年もメールのやりとりをケータイでする時代です。パソコンでするイー・メールも普通の通信手段になりました。年賀状はさすがにまだ廃れませんが、email の年賀状もボツボツ届きはじめました。宛名などもパソコンのワープロを使って印刷する人のほうが多いくらいです。
ほんの10年ほどのあいだに、手紙の書き方が劇的に変わってしまいました。いま、80歳に近い年齢の方々で、いまさらパソコンのキーボードを覚えるのも面倒だ、という方は、手書きの手紙をくださることがあります。私の母親は90歳になりますが、去年からだったか、ケータイでメールを出すことを覚え、孫たちとそれでやりとりしているそうです。そういう年寄りもいることはいます。
泉井久之助(いずい・ひさのすけ)という1903年生まれの言語学者がいらっしゃいました。この先生は、1983年にお亡くなりになりましたが、くださる書状は、ほぼ90%が手書きのハガキでした。長い用事のときは、2通に分けてお送りくださった。1枚のハガキに、小さな文字でびっしり書き込まれていました。書き直しも消しもなんにもないもので、用むきは、はっきり伝わる見事なハガキでしたね。
今でも、もっぱらハガキで手紙をくださる先生がいらっしゃいます。野球の話、人物月旦、政治向きの話題、ときに応じて内容は多岐にわたりますが、この先生は、挿入語句がバルーン(吹き出しのように)で入ったりしますが、文字自体の書き直しということはまずありません。
わずか50円で、日本全国どこにでも手紙を届けられる仕組みというのは、考えてみるとじつにすぐれたシステムです。前島密(ひそか)が、日本で最初に郵便事業を始めたのだったと習ったものですが、当初から一律の料金だったはずです。私どもがハガキを使い始めたころは、たしか1枚5円でした。
年賀状のあて名書きは、まだ手書きで書いています。前ならハガキで通信していた友人・知人たちは、みんなメール・アドレスを交換しているので、手書きの手紙を書く機会がうんと減りました。いざ万年筆で書こうとすると、漢字の書き方を忘れてしまっていることが多い。日記を書けばいいのでしょうが、それだってこうしてブログというものになってしまいました。
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