太宰治
来年(2009)は太宰治生誕100年にあたり、またもや太宰ブームが到来しているのだそうです。「まるで自分のことが書いてあるようです」と、大学生の男子がテレビのインタビューでこたえていました。五所川原市金木町の「斜陽館 」も、観光客が増えているらしい。
国語の教科書で「走れメロス」を読んだ人は多いはずです。今も高校の教科書に採用されているかしら。私はたしか中学校の国語の教科書で教わった記憶があります。58歳くらいのとき、必要があって「走れメロス」を読んだのですが、少年のころの感激はなにもよみがえってきませんでした。彼の作品のなかでは、めずらしく文章が雑なのです。
太宰の作品は私も若い頃たくさん読みました。「ヴィヨンの妻」「駆け込み訴え」「女生徒」「人間失格」「斜陽」などなど。「如是我聞(にょぜがもん)」というエッセイ集のようなものもありました。芥川賞が欲しくて、取れなくて、その恨みつらみをメンメンと掻き口説いていたはずです。
一番すきな作品は「津軽」です。一種の紀行文。津島修治(が本名)さんが、久しぶりに故郷に帰る。子どものころ世話をしてもらった、タケさんという女中さんに何年ぶりかで再会するシーンは、静かな感動を与えます。このタケさんは、「坊ちゃん」の清(きよ)さんと並ぶ、日本文学史上の代表的「女中さん」と言うべきものです。新潮文庫ほかで読むことができます。
猪瀬直樹『ピカレスク―太宰治伝』(文春文庫)を読むと、なんてイヤな奴だろうとあきれますが、 作家は作品が面白ければいいわけです。「津軽」はおととしだかに再読しましたが、やっぱり面白かった。爆笑するほかない、津軽風過剰接待のシーンが出てきます。
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