D番号 | パパ・パパゲーノ

D番号

 モーツァルトの作品には、ケッヘル何番と、番号がついています。最晩年の『クラリネット協奏曲』はK622、『レクイエム』はK626という具合。ケッヘルという研究者が19世紀末に番号をつけました。その後研究が進んで、若干数字が移動することがあり、その場合は、二つの番号が併記されたりしています。
 
 シューベルトの場合は、ドイチュという学者が20世紀になってから整理した、ドイチュ番号がついている。小品が多く、未発表の作品なども整理されて、D990(!)まであります。実際の曲数は1000を越えるのだそうです。「野ばら」はD257、「アヴェ・マリア」はD839というふうになる。
 
 「四つの即興曲」というピアノの曲集が2種あって、それぞれD899とD935番。このところ、ヴィルヘルム・ケンプ(Wilhelm Kempff)のCDを聞いています。骨格がきちんとしているという印象の演奏で、心が洗われるようです。内田光子も、いまや世界で一二をあらそう人気のシューベルト弾きですが、その、「即興曲集」も聞き出しました。たいてい、1枚のCDに二つの作品が入っています。899番の第2曲など、ラヴェルの「水のたわむれ」の先駆かと思わせる華麗さです。
 
 もちろん、シューベルトの歌曲も大好きです。歌曲集『冬の旅』(D911ですが、番号は作品検索の際の手がかりにすることが多いので、この場合は、番号をつけるとうるさい感じになります)の、ハンス・ホッター盤、フィッシャー=ディースカウ盤とも、よく聞きます。ペーター・シュライヤーの『白鳥の歌』も。
 
 最近、サワダさんのすすめで、「夕映えの中で;Im Abendrot」(D799、こういう場合に便利なのです、この番号が)を聞きました。マーガレット・プライスというウェールズ生まれのソプラノが歌った、シューベルト歌曲集,全部で12曲を収めていますが、その中の1曲。これが、ちょっと類を見ないほどの名唱です。(リヒャルト・シュトラウスの曲集『四つの最後の歌』にも、同じタイトルの名曲があるので、これからお探しになる方は、お間違えないように。シュトラウスの曲をプライスもレコーディングしているので、なおのこと。)他の11曲も、数多いシューベルトの歌曲から、バランスよく選曲されたもののようで、みな、耳の幸福を約束するものです。(YouTube でさがしても、残念ながらフィッシャー=ディースカウの歌うものしか見つけられません。バリトンで聞くと、別の曲かと思うくらい感じが違います。)
 
 シューベルト(1797-1828)は、32歳になるちょっと前に亡くなったのですね。梅毒で死んだ、というのが定説でしたが、ウィキペディアによると、死因は腸チフスなんですって。


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