ロベルト・デヴェリュー公演
待ちに待った『ロベルト・デヴェリュー』を聞いてきました。10月31日、東京文化会館。4階R2列7番。3万1千円(!)の席。1枚でこんなにするチケットを買ったのは生まれて初めてです。で、モトは取れたか。十分に取れました。
前にも書いたように(→こちら
)、女王エリザベッタ、そのお側役サラ、サラの夫で国会議員大臣ノッティンガム公爵、そして、反逆罪で告発されているエセックス伯爵ロベルト・デヴェリュー、この4人が運命に翻弄されて悲劇的結末へいたる、ちょっと大時代な芝居です。このたびの公演は、演奏会形式というもので、オーケストラも舞台に上がり、その後ろに合唱団、歌手たちは、指揮者を横に見ながら歌います。ウィーンの国立歌劇場の引越し公演です。ウィーンの舞台を見た人の書いたものを読むと、大道具が大スケールで、そのまま再現できる舞台は東京では見つからず、やむなく演奏会形式にしたのだそうです。
エリザベッタ: エディタ・グルベローヴァ(ソプラノ)
サラ: ナディア・クラステヴァ(メゾ・ソプラノ)
ノッティンガム公爵: ロベルト・フロンターリ(バリトン)
ロベルト: ホセ・ブロス(テノール)
オーケストラも合唱団も、みなウィーンのシュターツ・オーパーのメンバーです。指揮者は、エディタの旦那さん、フリードリッヒ・ハイダー。これだけの大人数を迎えたのですから、値段の高いのはやむをえません。なんだか、値段ばかり言ってるなあ。
この演目で、現在望みうる最強の面子ではありますまいか。グルベローヴァは、ことし61歳になったはず。昭和で言えば21年生まれですよ。この人の声を聞くことができるだけでも、ここまで生きてきてよかったと思いますね。「グルベローヴァの歌には大きな空間が必要だ」ということをニール・リショイという評論家が書いていますが、4階の席は、そのためにも良い席でした。大ホールのすみずみまで響き通る、ピアニッシモ、そこからクレッシェンドしてフォルティッシモにいたるダイナミズムには、このたびもまたしびれました。
テナーのホセ・ブロスの声も特筆すべきもの。硬質の、乾いた声ですが、おそろしく安定した美声です。6月にミラノで聞いたアルフレードよりぐんと出来がいいように感じました。
このオペラは、サラが悲劇の鍵を握っていますが、クラステヴァという初めて聞いた歌手も、もう文句なしです。
最後に(しかし最小にでなく)、ノッテインガム公爵のフロンターリという歌手の表現力にも感嘆しました。バリトンにしては苦しいかもしれない音域(しかも伸ばす)があります。持っているDVDの歌手は、その音が少しかすれますが、フロンターリは、いともラクラクとその声を出し、なおかつ美しく歌い上げました。
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