内田光子 | パパ・パパゲーノ

内田光子

 銀座の山野楽器は、もともと主として西洋音楽の楽器を売る専門店ですが、今でももちろん売っていますが、音楽CDやDVDも扱っている店です。品揃えが豊富なので(映画や落語のDVDもたくさん)、そっちに行くとたいてい一度はのぞいてみます。昨日立ち寄ったら内田光子のモーツァルト・ピアノソナタ全集(全18曲+「ピアノのためのファンタジア」)5枚組で3500円の特価品がありました。1枚750円ですよ。もちろん新品。つい手が伸びました。帰宅してすぐに頭から聞いてみました。気負いもてらいもなんにもない、しかし、魂の深いところがゆさぶられるようなすてきな音です。私のようなものでも、こういう演奏に接すると、無いと思っていた魂があらわれるのですね。

 この人のCDのジャケットには、たいてい演奏中の写真がデザインされています。眉を八の字にして、トランス状態に陥ったかのような表情を捉えたシーンが多い。「表紙で本の中身を判断してはいけない」という意味の諺がありますが、それを思い出してしまって、敬遠するときもありました。この全集は、ピアノの黒鍵を主にして、ボカして写した写真に、(ほとんどが白抜きの)文字をあしらってあるだけなので、彼女のアルバムとしては、見た目のすっきりしたものです。

 内田光子は、コンサートのアンコール(の最後)には、いつもモーツァルトのピアノ・ソナタ15番の第2楽章を弾いてしまうのだそうです(この曲の第1楽章は「ドーミソ シードレド ラーソドソーファーミ」と始まる、ピアノを習い初めた人もよく弾く曲)。下に YouTube の動画を貼り付けておきます。この人のモーツァルトのピアノ協奏曲第20番も、多くの聴衆をとりこにした名演があるそうです。貼り付けた YouTube の近くに、サイモン・ラトルが指揮したそれが出てきます。

 そこに、内田光子のアップした画像が何度も出てきます。「入魂」ということはこれを指すのでしょうね。本当に、この曲の世界に入り込んでいくさまが見られます。オーケストラにあわせてなにごとか話しているかのように口を動かしているのが分かります。そういう一瞬をとらえたのが、あの、CDジャケットの写真なのでした。

 それにしても、このアンダンテの美しさはたとえようもありませんね。