新刊書の書店で
今から20年ほど前のことですが、『本の雑誌』という、今も続いている月刊雑誌の、読者投稿欄「三角窓口」のページが異様に盛り上がったことがありました。
この雑誌はタイトル通り、本に関する話題が中心で、椎名誠・目黒考二・沢野ひとし・木村晋介、というグループが、仲間内の情報交換のために作って都内の本屋さんにおいてもらったら評判を呼んで、月刊にあらためたものです。その後も、本ならどんなジャンルの本でも、ともかく面白がる、その精神で一貫してブレないので、長い間、読者が途絶えなかったものでしょう。最近は、読まなくなりましたが、「発作的座談会」というような題で、上にあげた連中が気炎をあげるページが年に何回か(それこそ発作的に)あったりして(今でもあるのかな)、元気一杯の雑誌でした。
読者欄で盛り上がったのは、「新刊書店に入るとなぜ便意(大)を催すか」というトンデモない話題です。全国から、私もそうだ、俺も経験者だ、ぼくも今年から急にそうなった、という投書が集まったようでした。こういう話題は普通はご婦人は参加しないものでしょうが、この雑誌の女性読者たちは、(たしか実名で投書するルールだったはず)悪びれず、経験談を語っていましたね。なぜそういう現象が、全国的に生じるのであるか、結論は出ませんでした。予想されたことではありますけれど。「古本屋に行ってもこういうことはない」とも言われていました。
読んでいるときは、へえ、そういうこともあるか、とひとごととして見ていたのですが、最近、私自身もその症候に悩まされるようになりました。たまたま、一度そういうことがあったのが、大量の本を見ると反射的にそうなる、いわゆる「パブロフの犬」状態になるもののようです、私の場合は。その後、『本の雑誌』から、この話題は消えたようですから、全国の新刊本屋さんでモジモジしている客も減ったのかもしれませんね。
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