幼稚園の砂場
1990年代に、『人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ』(ロバート・フルガム著、いま河出文庫)という本(翻訳)がちょっとしたベストセラーになったことがあります。必要があって原文を拾い読みしましたが、社会生活に欠かすことのできないルールは、子どものころにみんな教わっている、しかし、忘れている人が多い、というような内容だったと記憶しています。
幼稚園で教えられるルールが10くらいあげられていたと思いますが、よく覚えているのは次のルールです。
Put things back where you found them.
(ものは、見つけた場所に戻しなさい)
家の中でも、爪切りやハサミ、ものさし、缶切り、などなど、毎日使うのではないものでも、使いたいときにすぐ手に取れるように、いつも決まった場所にある、というのが望ましい。ときどき置き場所が変わったりするとおそろしく不便な感じがするものです。
私が小学校へ上がるころには、近くに幼稚園というものはありませんでした。ひょっとしたら戦前にはあったのか。幼稚園というものに行ったことがないので、「人生に必要な知恵」が少しならず欠けているのかもしれません。それでも、今では、朱肉とかハンコとか、ペンチとかねじまわしとか、どこにあるかは決まっています。子どもが使って、そのまま自分の机の上においてあったりすると腹の立つものでした。
年をとってくると、ますます、決まったものは決まった場所に戻すことが重要になってきます。しみじみ、そのことを感じています。
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