バイリングアル | パパ・パパゲーノ

バイリングアル

 おととい会ったローマの「親戚」の、ふたりいるお嬢さんのうち、上のお嬢さんがもうすぐ5歳になるところです。この子が、いわゆる「バイリングアル」でした。ママが日本語で話すとすかさず日本語、パパがイタリア語で話しかけると、ごく自然にイタリア語が出てきます。コードスイッチングが目の前で行なわれるので目を見張りました。


 自分から、パパに話そうとするときも、構えは自然にイタリア語モードになっているようです。話し相手がだれかの見極めが先にあるようでした。ですから、私が、少ししか知らないイタリア語で話しかけると、「ヘンなおじさん」という表情になります。深川江戸資料館の長屋の屋根の上にいた猫の置物を見た時に、「猫はイタリア語でなんて言うの?」と聞いたら、それには「イル・ガット」と、定冠詞つきで教えてくれました。


 お母さんの話では、どちらの言語であれ、相当込み入った話でも、隅から隅まで分かっているのだということでした。


 こういうふうに、ごく自然に二つの言語を習得してしまうのは、うらやましいと言えばうらやましい。まれには「どっちが本当の自分だろうか」と、(思春期になると)悩む場合もあるそうですから、いちがいに喜んでばかりもいられないのだそうです。でも、この利発な少女は、賢明な両親(と祖父母)のあふれるような愛情につつまれて育っているようですから、そんな心配も無用というものです。


 2歳直前の下のお嬢さんも、すごい勢いでお話をし始めているそうですから、親子4人のあいだで、イタリア語・日本語が飛び交うのでしょうね。ほんとうに、ずーっとそばで見ていたくなりました。


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