ファム・ファタル
ファム・ファタルというのは、元はフランス語(femme fatale)ですが、英語でもそのまま使われるようです。英語の辞書(研究社『新英和大辞典』)では、こんなふうに説明されます。
魔性の女、妖婦型の女;妖しい魅力をもった女
ウェブスターの大辞典の語釈を訳してみるとこうなります。
抗し難く魅力的な女、とくに、男たちを、困難で、危険で、破滅的な状況に導く女;サイレン
いずれの辞書でも、そういう女は一人ではないということを暗示しています。その女が現れると、男たちが(すべてではないとしても)なびくような、そんなイメージか。楊貴妃とかクレオパトラとかの名前が思い浮かびますが、本当かなあ。楊貴妃は玄宗皇帝にとってファム・ファタルであり、クレオパトラはシーザーにとってそうであるということではないでしょうか?
ひとりの男が、その女のために身の破滅を招いてしまう、そういう女のことを指して「ファム・ファタル」と呼ぶのだと思います。つまり、ドン・ホセにとってはカルメンが、ラダメスにとってはアイーダが、そういう女であったということのようです。ものすごい女が、ひとりで何人もの男を破滅させるというのではないでしょう。
『スタンダード仏和辞典』では、
男を破滅させる宿命の女性、妖婦
となっています。ここにも出てくる「妖婦」というのはどんな女のことでしょうね? 辞書の執筆者たちの「コワイモノ見たさ」の訳語のような気がします。
いま調べたら、中森明菜のアルバムのタイトルに「ファム・ファタル」というのがあるようです。まさか「運命に翻弄された女」という含意ではなかろうと思いますが。