最後の晩餐
ミラノへ行ったら、レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』を見てみたいと思っていました。サンタ・マリア・デッレ・グラッツィエ教会にあることもよくは知らずに出かけました。教会の入り口の左脇に別の入り口があって、そこがチケット売場になっています。1日中人ごみが絶えないのではあるまいかと思われるほど、切符を求める人でごったがえしていました。やっと順番がきてお姉さんに聞いたら、「チケットは売り切れです。2週間先まで」ということでした。事前によく調べていかなかったのを悔やみました。
教会の長方形の食堂の短辺の壁面に描かれたこの絵を見るには、15分きざみで一度に25人ほどずつに限られているのだそうです。3重くらいの厳重な扉で仕切られた廊下に順に入って、やっとうす暗い空間で空前の大作にまみえることができる。
そんなに複雑な入場制限があることを知らずに出かけたこちらが悪い。あきらめて帰りかけたら、なんという幸運でしょう、アメリカ人らしいお嬢さんが、今から(3時45分)入れる切符を手にして、「もう行かなければならない時間です。ムダになってしまうので、これあげます」という意味のことをおっしゃった。タダでもらうわけにも行きませんので、お金を渡してその切符を受け取りました。定価は1枚6.5ユーロのチケットです。ありがたいことでした。このとき3時半くらいです。ご先祖によっぽど善行を積んだ人がいたのかしら、と幸運を喜びました。
聞きしにまさる名画でした。『ダヴィンチ・コード』というベストセラー小説で初めて知ったことですが、『最後の晩餐』の、左から5人目あたりにユダが描かれていて、彼の後ろ(下手側)にナイフを持った手首が見える。これがどの人物の手か絵を見ただけでは分からない、と書いてありました。しげしげとそこを見つめましたが、なるほど誰の手首か分かりません。同じく『ダヴィンチ・コード』で、通説のヨハネではなく、じつはマグダラのマリアだと言われた、イエスの隣(下手)に座っている人物の表情もすばらしいものでした。
帰りに、教会の中も見学しました。うってかわって人も少なく、静謐な時間が流れているのでありました。
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