人名の漢字 | パパ・パパゲーノ

人名の漢字

 当用漢字(いまの常用漢字の前身)ができる以前に生まれました。父親が上田萬年の『大字典』を調べて私の名前を付けたようです。字画は簡単なのに、戦後の人名用漢字には使われない文字が一字入っています(にんべんに光と書く侊という字)。→万や、→広、→沢のように、旧字に対応する新字体がある文字だったらよかったのですが、まったく、それ一字だけ。


 さいわいなことに、JIS漢字第3水準には入りましたので、パソコン上での文字入力には問題がなくなりました。


 ところが、未だに第3水準の漢字を装備していないコンピュータがたくさんあるようで、この間も、ある銀行に口座を作ろうとして、ネットで入力したら、文字を認識しないらしく、エラー・メッセージが出てしまいました。カスタマー・センターに電話をかけて、とりあえず事態は収拾したのですが、自分の名前の文字を、いちいち口頭で伝えなければ用が足りないというのは面倒なものです。


 その文字だけひらがなにして送信しましたが、本人確認のための住民基本カードをファックスで送ったら、当然のことながら、文字が一致していないので、またもやご下問がありました。市役所でも税務署でも、第3水準漢字を認識しているので、もとの漢字のまま記録されているからこういうことが起きます。


 諸橋轍次博士の『大漢和辞典』の親文字は約5万字とうたってあります。この数で、中国の古典に使われた文字はあらかた網羅しているという。日本でできた漢字(のようないわゆる国字)の数は知れたものです。全部ワープロで打ち出せるようにするのは、技術的には難なくできるのだそうです。書体(明朝体やゴチック体)の違いなどを表現するのもすぐにもできる、と専門家に聞いたことがあります。


 そろそろ、日本語で使う漢字の統一をすべきです。私のように、めったにない字を名前に持ったために、しなくてもいい苦労をした人は少なくないはずです。だんだん後期高齢者になって淘汰されるから要らない、という問題ではない。先の、諸橋先生のお名前の「轍」はJIS漢字では第1水準の文字表にありますが、画面上に表わすためにはちょっとした手順が必要です。このお名前が入力される機会がなくなることはないはずなので、そういう時間のムダは少なくしたほうがいいと思うわけです。


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