ジュリア | パパ・パパゲーノ

ジュリア

 テレビのリモコンでチャカチャカ画面を変えているうちに、思わず目に止まったシーンから見続けて、ついにおしまいまで見てしまう、そういう経験はありませんか? 連休中に、何度目かのそういう機会が訪れました。


 ジェーン・フォンダが、1930 年代の洋服姿で現われて、タイプをたたいています。やたらにタバコを吸う。劇作家だということが分かってきました。リリアンと呼ばれているので、もしや、リリアン・ヘルマンの役かと思ったらその通りでした。名前しか知らない作家ですけれど。


 リリアンが作家として成功して、ソ連の演劇協会から招待を受けて、パリ―ワルシャワ経由の列車でモスクワに行くことになります。反ナチの運動をヨーロッパでしている、親友ジュリアの元へお金を運ぶ役目を引き受ける。ジュリアはベルリンにいるので、ワルシャワを通らずに、経路の変更をしてベルリンに向かいます。この列車のシーンが手に汗を握る展開です。


 共産主義びいきの、ユダヤ人のアメリカ作家が、ナチ支配下の都市を通過してモスクワへ行こうというのですから、命がけでした。お金(5万ドル?)の隠し場所も巧妙です。


 ここに書いたのは、映画の本筋ではありません。複雑な時代背景・政治状況と、錯綜する人間関係とをヴィヴィッドに描いた傑作です。女優メリル・ストリープの映画初出演作でもあるとのこと。


 この映画は、リリアン・ヘルマンの自伝をもとにしたものだそうで、リリアンに扮したのがジェーン・フォンダ。ジュリアにヴァネッサ・レッドグレーヴ(トム・クルーズの『ミッション・インポッシブル』第1作で、東側スパイの元締を演じたあの女優)でした。びっくりしたのは、この女優ふたりは同じ年齢なのですね。


 1977 年公開のこの作品は、 1978 度の3つのオスカーを獲得しました。ヴァネッサが助演女優賞、リリアン・ヘルマンと生涯を暮らしたハードボイルド作家ダシール・ハメット(『血の収穫』『マルタの鷹』など)を演じた、ジェイソン・ロバーズ(アメリカ大統領の役をよくやる役者)が助演男優賞、それと脚本賞。ジェーン・フォンダは主演女優賞にノミネートされましたが残念ながらはずれた。この年はダイアン・キートンが『アニー・ホール』で受賞。


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