列挙・枚挙
知人の母上で、いま84歳になる方が作った短歌の手書きのコピーを頂戴しました。その中にこんな歌があります。
彼岸花おしろい水引あかのまま淋しき吾に秋の花赤し
(よしおかよしみ)
彼岸花・おしろい花・水引草・あかまんま、と4種類の秋の花を列挙しながら、老境に彩りを添えて、心象風景を叙した歌と読みました。他にも、お嬢様(この方が知人)との確執とも読める歌があったりして、短歌という形式が取り込むことのできる感情の多様さも面白いものでした。
このように、意味の近い語を並べる方法を、レトリックでは、「列叙」(並べて述べる)のひとつ、「列挙」あるいは「枚挙」と呼ぶようです。すぐ思い浮かぶのは、
地震かみなり火事親爺
です。この標語の眼目は「親爺」にありますが、強調のため、似たものを列挙したものです。
あるいは、初夢に見るとめでたいとされる、
一富士二鷹三なすび
なども、列挙の仲間に入りそうです。
いつぞや引用した俳句、
奈良七重七堂伽藍八重桜 (芭蕉)
も、このレトリックを使ったものと言えます。
同じ手法でできた俳句に、
葱生姜紫蘇かつを節冷奴 (池田恵一)
というのもあります。季節は夏ですが、俳句の持つ諧謔がよく出た佳什というべき作です。