白いカラス
ニコール・キッドマンの噂をしていて、『白いカラス』がよかったという人がいました。前にも見た記憶はあるのですが、どんな話か忘れてしまったので、DVDを借りてきてじっくり鑑賞しました。
フィリップ・ロスの小説を映画にしたものでした。ロスの作品は読んだことがありません。原作がきちんとできていると、映画の説得力も増す、という典型のような作品に仕上がっています。
地方の大学の、初のユダヤ人古典学教授、コールマン・シルクが主人公。これをアンソニー・ホプキンズが演じる。授業中に発したspooks(幽霊。黒人を差別してこう呼ぶこともある)という言葉をとがめられて、教授職を辞任せざるをえなくなる、ところから話が始まります。フィリップ・ロスもユダヤ系の作家として知られています。
クリントンのセックス・スキャンダルが冒頭に出てくるので、1998年か99年くらいの時代設定。ヴェトナム戦争のトラウマを引きずったままの中年男がエド・ハリス。それと別れた、もと妻がニコール。二人いた子どもを、火事でなくしたことが遠因で離婚したもののようです。
原題は The Human Stain 、人間の汚れ・しみ、というような意味。Stain には、他に「染料・着色剤」という意味もありました。フランスでは「嘘の色」というタイトルだったらしい。登場人物それぞれが重い過去を背負っています。
教授が長い年月にわたって隠してきた秘密がフラッシュバックの手法で明らかにされていきます。若いころの教授の役を、いまや「プリズン・ブレイク」(TVドラマ)で大人気のウェントワース・ミラーが演じています。
物語全体の語り手が、ズッカーマンという名前の作家に扮するゲイリー・シニーズです。
教授とニコールが、あるきっかけから恋に落ちる。というより、物語は、その恋の展開を追うように進みます。ホプキンズとキッドマンのふたりの演技がからむシーンの迫真力こそ見ものです。
ネタばれにならないように書いたつもりです。それにしても「白いカラス」という邦訳はいただけない。映画を見終わると、こういう邦題をつけたくなった気持も分からないではないのですが、せめて、フランスの訳を真似て「いつわりの色彩」とかなんとか、にしてもらいたかったところです。
久しぶりに充実した映画鑑賞でした。