母には二度会いたれども | パパ・パパゲーノ

母には二度会いたれども

 「母には二度会いたれども、父には一度も会わず」という、なぞなぞがあります。江戸時代の本にある、と書いてある人もいますから、そんなに昔々のなぞではないかもしれません。答えは「唇」です。


 母の発音は、現在は「ハハ haha」ですが、昔は「ファファ fafa」と言っていたようです。そのもっと前は「パパ papa」だったといいます。上田万年という言語学者が「P音考」という論文を書いて広まった説のようです。


上に fafa とローマ字でしるしたのは、英語の f の音とは違います。音声学の用語では「両唇(りょうしん)摩擦音 bilabial fricative」というものです。富士山の「ふ」の音に残っています。


 富士山を英語表記するときは Mount Fuji と、f で書きますのが、f の音は、英語では、上の歯と下唇を軽くふれて出すと教わりますが、日本語では歯は使いません。上下の唇の間から出てくる音です。


 実際に大昔(漢字が中国から輸入されたころ)、母を papa と発音していたか否かは、文書の証拠があるわけではないので、はっきりしたことは言えないのだそうです。


 ファファのほうは、はっきりしています。こういう発音を実際聞いたことがあります。生きていれば93歳になるはずの、向かいのおばさんは、ずっとこう発音していました。まだ、日本各地で母をファファと発音する人、その発音を聞いたことのある人、はたくさん残っているはずです。


 上のなぞなぞも、papa の証拠にする学者もいるようですが、両唇を使うことを示しただけとも考えられます。