ジャクリーヌ・デュプレ
デュプレはエルガーの『チェロ協奏曲』を得意にしていました。1945年にイギリスで生まれ、1987年に42歳の若さで亡くなりました。多発性硬化症という自己免疫病に冒され、演奏もできなくなってしまったようです。21歳のときにダニエル・バレンボイムと結婚しました。エルガーも、ダニエル指揮のCDがあります。
宇野功芳という指揮者が「鬼神もたじろぐ凄奏」と絶賛した、ドボルザークの『チェロ協奏曲』が、宇野氏の言葉通り、じつに圧倒的な感銘を与えます。
ヨーヨーマのドボルザークも素敵ですが、ジャクリーヌの迫力には負けますね。前からピエール・フルニエのチェロを好んで聞いてきました。第一楽章の、チェロの独奏が始まるときの、ふるえがくるほどのメロディーを、フルニエは、端整な、情におぼれない音で弾きます。上品な響きがもちろん今でも気に入っています。
デュプレのは、1曲まるごと鷲づかみにしたような激しさです。フレーズの変わり目で、音をテヌート(思い入れとともに少し引き伸ばす弾き方)にするのは、弦楽器奏者はどなたでもやることですが、デュプレのそれは、タイミングが絶妙です。三つの楽章を、息もつがせず、と言いたいくらいのスピード感で走り抜ける。これも指揮はバレンボイムです。
映画『ほんとうのジャクリーヌ・デュプレ』をごらんになりましたか? 妻に持ったら難儀しそうなひととなりがよく出た作品でした。