はやす | パパ・パパゲーノ

はやす

 私の方言では、たくあんを輪切りにしたり、トマトをスライスしたりする動作を「はやす」という動詞で表現しました。今でも、そう言うはずです。


 包丁を使って魚や野菜を切る動作すべてについて「はやす」と言えるか、というと、そうでもない。りんごの皮を剥いたり、サバを3枚におろしたりする時には使わなかったと思います。包丁の動きが縦方向の場合に限られたような気がします。


 間違って指を傷つけることがありますが、その場合は「指を切った」であって、「指をはやした」と言ったら、相当おそろしい話になります。


 「(まな板の上にものを載せて、それを)スライスする」というのが、「はやす」の意味になります。長いこと、なぜこういう動詞があるのか理解できなかった。


 ある雑誌に投稿して、「教えてください」と書いたら、関西の方が答えてくださいました。もう20年くらい前ですが。


まな板に包丁が当たる音が、お囃子の太鼓(でんでん太鼓の方でしょう)の音や、景気をつけるために木を叩くときの音に似ているからではないか、というものでした。「はやす」は「囃す」だったのか。疑問が氷解しましたね。


 もうひとつ、イサバ屋という言葉もありました。魚屋のことですね。これは、今でも千葉県の漁港のある町で、そう名乗る魚屋さんがありますし、古い辞書には載っていますから、由緒のある言葉のようです。漢字で「五十集屋」と書く。語の来歴はわかりません。調べてもし分かったら報告しますね。


 魚を振り売りしていた、赤ら顔の大柄なおじさんがいました。容貌がガイジンのようで、白系ロシア人らしいといううわさでした。言葉は生粋の秋田弁でしたけれど。この人の呼び名は、なんと「シンチュウグン・イサバ」でした。「進駐軍五十集」というわけです。