カーテン・コール
10月2日の『ドン・ジョヴァンニ』の演奏会でちょっと珍しい光景を見ました。
フィナーレが終わって、拍手万来の中、主役・脇役が、と言っても、10人くらいが入れ代わり立ち代わり、お辞儀をしたり、投げキスをしたりしている間に、オーケストラ・ボックスが空っぽになってしまいました。ひととおり歌手への拍手が済んだところで、幕がするする上がって、舞台奥に、指揮者であるバレンボイムを真ん中に、オーケストラのおそらく全メンバーが、並んで立っていました。ひときわ大きな拍手が起きました。
同じ舞台を見た S さんは、何度も劇場でオペラを見たけれど、こんなのは初めてだとおっしゃってました。
バレンボイムがお茶目なのか、演出家の意図なのか――ドン・ジョヴァンニが食事をするシーンで、レポレッロがなぜだかタオルを指揮者に放り投げます。それに応えて、指揮棒をワイングラスにもち換えて、乾杯の合図を返していました。客席を一挙に舞台と一体化させる巧妙な仕掛けに見えました。
オーケストラが、最後の音を出し終えると、拍手に続いて歌手たちのカーテン・コールに移るわけですが、DVDで何度も見ますし、舞台でもそうですが、主な役の何人かが並んで、お辞儀をして袖に引っ込む順番は、主役のソプラノから順に女声陣が先ですね。例外がない。胸を張って、背筋をピンと伸ばして舞台下手(しもて)にさがる姿をみていると、「レディ・ファースト」というのはこのことか、と納得させられます。