走れメロス | パパ・パパゲーノ

走れメロス

 雑誌『図書』10月号に、安野光雅さんが、《「走れメロス」にこだわる》という痛快至極な文章を寄せています。「わたしのこだわり」という、月代わりでいろいろな人がエッセイを書く欄です。


 「走れメロス」という作品を、私が要約するとこうなります。


 メロスは激怒した。必ず、かの邪知暴虐の王を除かねばならぬ。」短刀をもって王城に入っていってつかまった。王を殺しにきた、と白状した。即刻処刑しろ、と王は命じた。メロスは願いを言う。妹の結婚式をあげて3日後には帰ってくるから、それからにしてくれ。ついては、親友のテレンティウスを身代わりに置いていく。間に合わなかったら、彼を殺してくれ、と。ひたすら走り続け、友の処刑にあわやというタイミングで間に合う。王も友情の厚さに感激して、仲間にしてくれ、と言う。王様ばんざい。


 安野氏の「こだわり」(抜粋)。


 ①いきなり、殺しにいく、というのは、テロリストそのものではないか。②友人に断りもなく、身代わりにしてしまうのは理不尽である。③妹の結婚式があるのなら、そっちを先に片付けてから、王を殺しに赴くのが順序だろう。万一、後先になったとしても、親友に結婚式に出てもらうのが、友情として当然の行為ではないか。④間に合わないと友が処刑されるのが分かっているのに、自分の足で走って戻るバカがあるか、なぜ馬を使わなかったのか。


 こんな、乱暴な口調ではありませんが、ページの背後から聞こえてきそうな気がするのは、「こだわり」というよりは「いきどおり」と言えそうなものです。久しぶりに溜飲の下がる文章を読みました。詳しくは、同氏の文章をどうぞ。