三角ベース | パパ・パパゲーノ

三角ベース

 また、子どものころの話ですが、われわれの世代から、いわゆる団塊の世代の終わりくらいの年頃まで、男の子は、まず例外なく野球をやりました。やらなくともルールは知っていた。


 昭和でいうと30年代生まれくらいから、かつて、いちどもキャッチボールをしたことがない、と言うひとが増えたような気がします。そういう人にグローブ(で今風にグラブではなかった)を持たせてボールを受けさせてみると、みなグローブを突き出してしまうのでした。


 せまい空き地などで野球の試合をするときは、三角ベースでした。セカンドのベースがない。人数も9人ではなくて、まあ何人でもよかった。けっこう面白かったのです。


 日本のプロ野球史上に残る「三角ベース」というのがあります。長嶋茂雄選手がやった。


 一塁に出ていて、次のバッターが大きな当たりを打った。当然、ランナーは二塁ベースに向かい、まだ余裕があると三塁をねらいます。長嶋選手は二塁をまわって、三塁に達しそうになったところで、相手の外野手が捕球してしまいました。元のベースに戻らなければなりません。その場合は、二塁を踏んでから一塁に戻るのがルールです。ところが、間に合わないとみた彼は、まっすぐ(つまり相手ピッチャーの後ろを走って)一塁へ向かってしまったのでした。もちろんアウトです。


 長嶋さんらしいプレーで、私は好きです。