月曜日のロックポート | パパ・パパゲーノ

月曜日のロックポート

 小林秀雄は、自分が教わった辰野隆(ゆたか)教授から貰った革靴を何年も履いていた、と書いていたのを覚えています。


 休ませないで同じ靴を履き続けるのが靴の寿命を縮めるモトだと、靴屋さんはみなそういいます。


 若いころは、しかし、何足もの靴を揃えるなんて夢の夢みたいなものでした。水虫の巣窟のようになっていたであろう、わずかな数の靴で間に合わせていました。


 よくある、ばん広・甲高(こうだか)の足です。ばん広は「ばんびろ」ですね。「盤広」と書くのかしら。「幅広」の転化したものでしょう。そういう足ですから、なかなかピッタリ合う靴が見つけられない。歩く姿勢もよくないらしくて、カカトの外側から減って、悲惨な状態におちいることがしばしばありました。


 最近になってようやく、曜日ごとに違う靴が履けるようになりました。6足くらいの靴が靴箱に並んでいます。イメルダ夫人の気持が、望遠鏡を逆のぞきした程度に理解できます。大げさですね。


 ロックポートの靴が、この夏手に入りました。ウォーキング・シューズとしておおはやりのブランドだそうです。30年くらいの歴史。1万5千円でおつりがくるのもありました。この社の靴は、全米足病医師協会(APMA)認定というふれこみです。たしかに、履き心地がよろしい。


 APMAは、


 American Podiatric Medical Association


の頭字語です。足病医(podiatrist,ポダイアトリスト)という、専門医が、欧米には(たくさん)いるのだそうです。日本でもこれから増えるかもしれません。


 週が明けると、雨天でないかぎり、ロックポート(黒)を履いて仕事に出かける、というわけです。