「より」と「から」
きのう、「より」は「から」のあらたまった表現ということになってしまったらしい、と書きましたが、『明鏡国語辞典』もその説をとっていました。
「から」よりもかしこまった言い方。
と注記がしてあります。この意味であがっている例文は、
会議は三時より行う
横浜港より出港した
理事長よりご紹介いただく
などです。私がこれらを書くとすれば、すべて「から」にします。では、「より」の基本義はなにか。
比較の基点を示す
です。ふたたび同辞典の例文を借りると、
きのうより今日の方が寒い
私より彼女を選んだ
「から」とまぎらわしいのは、③基準となる時間・空間・数量などを示す場合。
三時より後ならいい
まん中より後ろに置く
これより先は立入禁止だ
まぎらわしいだけで、どれも「から」だと不自然です。最後の例文がもし、
ここより先は立入禁止
だったら、私なら「ここから」になりそうです。「から」の基本義は、
移動の起点を示す
です。先の③が、これと接点を持つのは見やすい道理です。
成田から出発する
三時から始まる
ひなから育てる
(同辞典から)
「米から酒を造る」などもこれに含ませてしまえばいい。「状態が移動する」と抽象的に捉えなおすのです。
以上、「比較・移動の起点」で「より・から」を分類するのは、日下部文夫先生に教えていただいたものです。
念のため言い添えますが、『明鏡国語辞典』は語義の分類、語釈などがきわだって明晰な辞典です。おすすめです。