日付 | パパ・パパゲーノ

日付

 むかし聞いたおハナシにこんなのがあります。


お空の宿屋に、ある日、太陽と月と星とが泊りました。朝になって、目覚めた星が、相客の太陽も月も姿が見えないのをいぶかって、宿屋のあるじにたずねます。「お日様もお月様も、とっくにおたちでございます。」それを聞いて、星がこう言ったという。「ああ、月日のたつのは早いものだなあ。」


 語呂合わせでできた他愛もない話ですが、時間の過ぎる早さを感じるたびに、思い出してしまいます。Yさんが教えてくれたのですが、彼は、池田弥三郎先生にうかがった、と言っていたように記憶しています。江戸の商家(池田先生が生まれたのは銀座の天麩羅屋でした)に伝わった話ということだったかも知れません。


 新式の腕時計を持っています。2,3日腕にはめずに寝かせておくと、針が進まない式の時計。内蔵コンピュータが時をきざんでいるらしい。あらためて動かすと、グルグル針がまわりだす。これを見ると、「時の経つのは早いなあ」と感心します。ヘンな感じではありますが。


 仕事に必要なメモというのは、紙の上でも、パソコン画面でも、それこそ限りなくありました。パソコンは、たいてい書き込みの日付が入りますが、後で見直した日付も入ったりするので、じつは、元の日付が特定できなかったりします。やり方をよく知らないせいでもありますが。


 紙のメモ(ワープロのプリントアウト、紙片、大学ノート、手帳のうしろのほう、など)には、必ず、最初にそれを書いた日付を入れることにしていました。ついこの間書いたよなあ、と思って、見直すともう1年前だったりします。日付書き込みを続けていると、大げさに言えば、時間の累積を感じることができます。