リゴレット
ヴェルディは傑作オペラをいくつも作っていますが、『リゴレット』(1851年初演)もそのひとつ。2年後の1853年には『イル・トロヴァトーレ』と『椿姫』を作曲しています。おそるべき創作力ですね。
16世紀、マントヴァが舞台です。マントヴァ公爵という好色漢に、ジルダというリゴレットの娘が惚れてしまう。リゴレットは、公爵に雇われている、せむしの道化(英語で言うフール)です。掌中の珠が、よりにもよって、一番好きになってもらいたくない男を好きになって、しかも、だまされてしまうのです。
殺し屋を雇い、公爵を殺して復讐をしようとはかるのですが、ことは意想外の結末を迎えることになります。
リゴレットが、「娘を返してくれ」と訴えるアリア、「悪魔め! 鬼め!」の調べの悲痛さは比べるものがないくらいです。
バリトンの名手たちが、この役を演じ録音を残しています。ティト・ゴッビもピエロ・カップッチッリも、レオ・ヌッチも。まだ、聞く機会にめぐまれていませんけれど。
私が聞いているのは、1964年の録音。ロバート・メリルがリゴレット、アンナ・モッフォがジルダ、アルフレード・クラウスがマントヴァ公爵、という、後で知ったのですが、この曲の決定版とされてきた盤(RCA)です。指揮はゲオルク・ショルティ。メリルの絶唱はおすすめです。
このオペラで、知らぬもののないアリアは「女心の歌」ですね。「風の中の羽のように変わりやすい女心」というもの。クラウスのこの歌にもしびれます。
イタリア・オペラには、「人殺し」と「復讐」という単語がしょっちゅう出てきます。ドラマを分かりやすく盛り上げる材料なのですかね。じっさい、話はみんな、いたって分かりやすい。