守屋省吾
守屋省吾立教大学名誉教授に『オペラ中毒記』(朝日新聞社,2005)という本があります。この先生、昭和10年生まれだそうですから、現在72歳でしょうか。日本の中世日記文学の研究者のようです。『蜻蛉日記形成論』とか『平安後期日記文学論』などという専門書が上記の本の奥付に記載されています。
私はもちろん、ご専門の本は読んだことはありません。オペラの話を読みたくてこの本を買いました。もう30年以上に及ぶ、本当の「中毒」ぶりが行間から立ちのぼります。好みのソプラノたち(グルベローヴァ、フレーニほか)に言及するときの筆のぬくもりがなんとも言えません。主たる鑑賞の場所が各地のオペラハウスです。
次のような1節を読むと、猛然と嫉妬心が湧いてきます。
《ウィーンに滞在する時はいつもおよそ二週間、この間観光らしきものはほとんどせず、ウィーン国立歌劇場、フォルクスオーパー、ブルク劇場でもっぱらオペラ鑑賞に努めるのだが、のべつまくなしに鑑賞するわけでなく、好みのものを選択する。すると三、四日連続してウィーンでのオペラなしの期間が生まれる。こういう期間を使って……これらの都市【ミュンヘン、ブダペスト、プラハ、リンツ、ザルツブルク、など】を訪ねる……》
「これらの都市」には、みな伝統ある立派な歌劇場があるのですね。
なんという優雅な生活でしょう。あやかりたい、あやかりたい。先立つものはどうするか。チマチマとロト6なぞ買ってみても、なんだかねえ。