リメイクと本歌取り | パパ・パパゲーノ

リメイクと本歌取り

  ニューヨークのホテルでテレビのリモコンを押していたら、いきなり映画『七人の侍』が出てきました。もちろん英語の字幕付きです。志村喬が農民の加勢に同意するあたりから見始めましたが、画面もシャープでしたし、音声がややくぐもっているほかは、不都合なく見続けることができました。ほとほとよくできた映画ですね。


 この映画は1954年に制作されました。英語のタイトルは The Seven Samurai と言うようです。1960年には、もう『荒野の七人』(The Magnificent Seven)として、ジョン・スタージェス監督がリメイク版を作ったのですね。ユル・ブリンナーが主役でした。スティーヴ・マックイーンも出ていました。


 最近では、周防正行監督『Shall We ダンス?』が、やはりハリウッドでリメイクされました。


 ハリウッド映画を日本でリメイクしたのもあるのでしょうが、寡聞にして知りません。


 リメイクというのは、昔ヒットした作品を作り直す場合が多いようですが、上のように、外国作品から話の大筋を借りて、舞台を別の国にして作る場合にも言われるようです。


 ディズニーのアニメ・ミュージカル『ライオン・キング』は、手塚治虫の『ジャングル大帝』を下敷きにしたという話ですよね。さらに、それが、舞台のミュージカル『ライオン・キング』になったもののようです。

 ただ、この物語は、全体として大枠は『ハムレット』なのですね。父王が兄に殺される、王子は復讐する、母は新王の后になる(ミュージカルでは拒絶していますが)、など、「アフリカのハムレット」と言ってもいいものです。


 こういうのは、和歌でいう「本歌取り」にあたるのでしょうか。そもそもの「本歌取り」のよい例が見つけられないので、説明がもどかしいのですが、前に作られた和歌(万葉集や古今集の)に敬意を表しながら、新しい、よく似た趣向の歌を詠む、というものです。新古今和歌集に多いのだそうです。


 バーンスタインの作曲した『ウェストサイド物語』は、『ロミオとジュリエット』から筋を借りていますね。ドニゼッティのオペラ『ランメルモールのルチア』(原作はスコット)も、話の型としては、やはり『ロミオ』だと思います。


 筋や話型の貸し借りは、これからも行われると思います。どんどんやって、面白い映画やオペラや芝居や小説を作ってもらいたい。「おっ、あれだ!」とひそかに感づいたりするのも観客の喜びなのですから。