おやこ鷹
「父も子もそろって有能」ということを示す言葉として「親子鷹」「父子鷹」があります。「父子鷹」は、勝小吉・海舟父子のことを書いた子母沢寛の作品名。映画にもなりました。
これからは、「母も子もそろって有能」という場合にも使われるでしょうね。
ただ有能であるばかりではなく、「同じ職業」も条件になります。
大関・貴ノ花と横綱・貴乃花父子などは、父子鷹と言えるかもしれません。ちょっと留保したくなるのは、力士としては、明らかに息子のほうが実績が上であることです。長男(横綱・若乃花)と比べてもそうなってしまう。日本で一番幸福な父親だったはずですけれどね。
飯田蛇笏(だこつ、1885-1962)と飯田龍太(1920-2007)父子は「おやこ鷹」でしょうね。ふたりがいなければ、昭和の俳句の歴史はずいぶんさびしいものになったはずですから。
くろがねの秋の風鈴鳴りにけり
草の露 連山影を正しうす (蛇笏)
一月の川一月の谷の中
かたつむり甲斐も信濃も雨の中 (龍太)
指揮者の、エーリッヒ・クライバーとカルロス・クライバー父子もいい勝負です。
ファンの数で言えば息子の圧勝というところです。残ったCDもたくさん売れたようですし。
でも、カルロスは父(の才能)に対して終生アタマが上がらなかった、と書いてある文章を読んだことがあります。
トンビとしては、はるか上空を舞う鷹たちを、あこがれながら見上げているわけであります。