高島俊男
高島俊男先生の、『週刊文春』の名物コラム「お言葉ですが…」は残念なことに、去年終わってしまいました。しかし、あらかたはまとめられたので、文春文庫で読むことができます。「人の悪口言うのが好き」と広言する方ですから、知ったかぶりで漢字の知識をひけらかしたりする学者(大抵はおおどころの大学の先生だった)を糾弾するときの舌鋒の鋭さは類を見ないものでした。
それでも、これぞと思った本をほめるときには、いたって景気よくほめるので、褒められた先生方は大いに発奮したことでしょう。滝浦真人『日本の敬語論』(大修館書店)はその例。いいぞ若武者! と叫んでいるような文章でした。
最近も『座右の名文』(文春新書)をお出しになった。新井白石に始まって、寺田寅彦・斎藤茂吉にいたる、シブい選択です。寺田寅彦の随筆のすばらしさを教えてもらいました。
高島先生のご専門は、中国文学だと思います。現代中国語にも堪能だし、古典にもくわしい。大学で教えていたこともあるようですが、いまは筆一本。
この先生の著書はたーくさんあります。『漢字と日本人』 (文春新書)、『メルヘン誕生:向田邦子をさがして』(いそっぷ社)、『李白と杜甫』(講談社学術文庫)などがおすすめです。どの本も、一読するとカシコクなった気にさせてくれます。向田邦子のことを書いた本は、同世代の共感のほどがよい、養分たっぷりの文章とでも言いたくなる本でした。