東御苑
丸谷才一の新著『袖のボタン』(朝日新聞社)の1編「街に樹と水を」にこんなことが書いてありました。
「たとえば、東京なら銀座四丁目や数寄屋橋の交差点の中心に一本の大樹を植え」ることを(芦原義信が)提案していた。賛成。
読んでいて私もそれは賛成だ、と思いました。ケヤキの大木が銀座4丁目の真ん中にあったらさぞやいい気分のものでしょう。新宿の駅前広場にもあればいいなあ。
幼少のころですが、やっと舗装ができたバス道路の真ん中に楠か欅の大木があって、根元に小さな祠を残してあったのを思い出しました。車はその木を迂回して通過する。切り倒すとタタリがあるんだって、と聞いて、子ども心にコワイ思いをしましたね。何年かのちには、切り倒されてしまいましたが。 【8月9日訂正:この木(槻の木と言っていましたが、ケヤキのこと)は健在だったそうです。どの木のことか分かっている人が、現場で確認してくれました。ありがとう、レイコさん。】
他の国の都市に比べて、東京は樹木が少ないのではないか。その根拠の一例として、
人口一人あたりの公園面積は、ロンドンは26.9平方メートル、東京は4.45平方メートル
という、注記も書いてありました。東京は人口がケタ違いに多いはずですから、比較すればこうなるかもしれません。公園(ロンドンならハイドパーク、東京なら上野・日比谷公園などか)同士の比較なのかしら。
私の印象では、東京ほど緑の多い都市はないのではないか、と思います。小さな神社がそこらじゅうにあって、大きな樹が枝を張っていたりする。椿山荘や八芳園【六義園や清澄庭園も】のようなところもうっそうとした樹木に囲まれています。
そうして、東京の緑の真打は、皇居東御苑です。江戸城の本丸・二の丸のあと。ここは、原則、月曜・金曜以外は、中に入ることができる。タダです。今なら、亭々たる大木が見渡すかぎり鬱蒼としており、ひろびろとした空がのぞめて、じつにいい気持になります。花の季節もよろしい。春先のサンシュユも。
田舎から親戚やともだちが来たりすると案内します。ウチの庭ではないのに、自慢したくなるのがおかしいですね。